2026-01-01から1年間の記事一覧
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、楊 双子さんの小説『台湾漫遊鉄道のふたり』(2023) 1938年、日本統治下の台湾を舞台にした鉄道旅の物語です。”ふたり”が、各地を巡り、地の料理を味わう、微笑ましい作品でした。 日本人作家・青山千鶴子は講演…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、犬丸幸平さんの小説『最後の皇帝と謎解きを』(2026) 1920年代の紫禁城を舞台にした歴史ミステリーです。清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の史実と組み合わさり、時代背景をきちんと盛り込んだユニークなミステリー…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その67 『フリーデルとカーテルリースヒェン〈KHM59〉』 あらすじ(要約) フリーデルという男とカーテルリースヒェンという女は、結婚して間もない若い夫婦でした。 フリーデルは「畑に行ってくるよ。戻ってきたら、肉…
ようやく母の葬儀が無事に終わった。旅立ってから5日目の今日。 昨年末に病気がわかったときは、高齢でもあったので、もう少しゆっくり時間が流れていくだろうと思っていたけど、その時間は思いのほか、はやく過ぎていった。 母の希望どおり、家族だけで静か…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、坂本湾さんの文藝賞受賞作『BOXBOXBOXBOX』(2025) 読後にじわじわと不気味さが広がる、印象的な作品ですね。 タモリさんの「世にも奇妙な物語」のような日常の裏側が崩れる感覚があります。 薄霧の立ち込める宅…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、塩田武士さんの小説『存在のすべてを』(2023) 1991年に神奈川県で起きた「二児同時誘拐事件」を起点に30年後の現在につながる長編小説です。 読み終えたあと、ずっと頭の中で問いが残り続けるような感覚。感想を…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その66 『たのもしい名づけ親のすずめの話』 あらすじ(要約) 昔、牝の鹿がいました。子どもを産んで狐を名づけ親に頼みました。すると、狐は雀にも来てくれと言いました。雀は友達の飼い犬も呼びたいと言い出しました…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、清水晴木さんの小説『分岐駅まほろし』(2022) 分岐駅まほろしは、人生の「もしも」に心を残した人々が迷い込む不思議な駅を舞台にした五話からなる物語です。 ①もしもあの時、告白をしていたら ②もしもあの時、…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、佐藤究さんの小説『幽玄F』(2023) 戦闘機に魅せられ、「飛ぶこと」そのものに人生を捧げた一人の男の軌跡を描いた作品です。 易永 透は幼い頃から空に強い憧れを抱き、高校生のときに友人と三沢基地航空祭を見…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その65 『犬と雀〈KHM58〉』 あらすじ(要約) 牧羊犬の飼い主は良い人でなく、えさをろくに与えませんでした。犬は家出しました。道で雀と出会い、雀は「犬くん、どうしてしょげているんだい」と声をかけました。 「お…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、上條一輝さんのホラー小説『深淵のテレパス』(2024) ある”怪談”を聴いたことがきっかけで、現実が寝食されていく物語です。 そんな恐怖と、背後に潜む得体の知れない”何か”へと踏み込んで、読書を不穏な結末へと…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、野﨑まどさんの小説『小説』(2024) 読書という行為の意味を問いかけながら、”小説を読むこと”そのものを肯定する物語です。読書好きには共感する一冊。 内海集司は五歳になった頃、父親を喜ばせる方法を発見した…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その64 『白はと』 あらすじ(要約) 王様の御殿の前に梨の木がありました。毎年見事な実を結びましたが、一晩のうちに誰かに持って行かれてしまいました。 王様には若様が三人いて、末のは、脳みそが足りないという評…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、貴志祐介さんのホラー小説『秋雨物語』(2022) 本作は、「餓鬼の田」「フーグ」「白鳥の歌」「こっくりさん」の4つの物語で構成される短編集です。 「秋雨」というタイトル。しとしとと降り続く様が不穏な空気を…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、伊与原 新さんの小説『翠雨の人』(2025) 日本の女性科学者の草分けで、地球科学者として世界的評価を受けた猿橋勝子の生涯を下敷きにしたフィクション小説です。 科学とは何かを問い、誠実であることの意味を問…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その63 『黄金(きん)の鳥〈KHM57〉』 あらすじ(要約) 昔、王様の御殿の裏に金の林檎がなる木がありました。明朝になると林檎の実が一つ足りないので、王様は番人をつけました。 王様には三人息子がいて、夜、長男を…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、町田そのこさんの小説『月とアマリリス』(2025) 町田さんといえば、これまで家族や孤独、再生を描く温かな印象が強ったですが、今回はミステリのジャンルへ挑んだ作品。でも単純なミステリではないですね。やは…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、三上幸四郎さんの江戸川乱歩賞作品『蒼天の鳥』(2023) 実在した女流作家・田中古代子を主人公に据え、史実を交え、フィクションとして大正時代の鳥取県を鮮やかに再現したミステリ作品です。 物語は大正13年夏、…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、北沢陶さんのホラー小説『をんごく』(2023) 死を受け入れられない人間の未練や執着が形を持ち、それが残っていることによって霊でも生者でもない”境界の存在”として現れたもの、「をんごく」。人間の欲と業の物…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その62 『恋人ローランド〈KHM56〉』 あらすじ(要約) 昔、一人の女がいました。魔法使いで娘を二人もっていました。一人は醜く意地悪ですが、実の娘なので可愛がりました。もう一人は美しく気立てがいいのですが、継…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、夏川草介さんの小説『スピノザの診察室』(2023) 医療がどれほど進歩しても、人は必ず死を迎えるけど、その中で「生きること」と「幸せとは何か」を問いかけてくる作品でした。 大学病院で将来を嘱望されていた医…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、朝倉かすみさんの小説『よむよむかたる』(2024) 生きがいを持つことが、どれほど人生を明るく照らすのか。良い読後感がそのまま伝わってくる作品です。 舞台は北海道小樽。古民家を改装したカフェ「喫茶シトロン…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その61 『がたがたの竹馬こぞう〈KHM55〉』 あらすじ(要約) 昔、あるところに粉ひきがありました。貧乏でしたが、美しい娘が一人いました。 粉ひきが王様と話すときがあって、威張ってみたくなり「娘を一人持っていま…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、背筋さんのモキュメンタリーホラー小説『近畿地方のある場所について』(2023) モキュメンタリー作品、最近よくありますね。雨穴さんとか、他にもいろんな方の作品が書店に並んでいます。 本作は、一見すると関係…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、金子玲介さんの小説『死んだ山田と教室』(2024) 奇想的な設定ですが、まっすぐに高校生の青春の”熱量”を描いた作品。 奇想を通じて、「生きる意味」「時間の儚さ」を考えさせられる一冊でした。 クラスの人気者…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その60 『ハンスばか』 あらすじ(要約) 昔、あるところに王様がいました。一人子の姫と不自由なく暮らしていました。 ところが、急に姫が子どもを一人産み、誰が父親なのかわかりません。王様は途方に暮れましたが、…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、織守きょうやさんの小説『彼女はそこにいる』(2023) ホラーとミステリの境界にあるような余韻。怖さだけじゃない、人の心に残る”執着”と、人がいるのに心だけがいないという”不在”を感じる物語ですね。 短期間で…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、彩瀬まるさんの小説『嵐をこえて会いに行く』(2025) 彩瀬さんの小説は初めてですが、読み終えたあと、日常的にある人の心の小さな揺れを丁寧に描いた、とても魅力的な作品だなと思いました。 『嵐をこえて会いに…
『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その59 『ながい鼻』 あらすじ(要約) 昔、お暇の出たおじいさんの兵隊三人がいました。恩給もいただかずにお払い箱になったので、乞食でもしなければ生きる道がありませんでした。 三人は森の中へ入り、日が暮れたの…
【あらすじ&ひとりごと】 今回読んだのは、呉勝浩さんの『法廷占拠 爆弾2』 前作『爆弾』で強烈な印象を残したスズキタゴサク。その続編です。 fudemogura.com 今回の舞台は「法廷」です。しかも五回目の公判の最中に起きる占拠事件という、閉ざされた空間…