『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その41
『コルベスさま〈KHM41〉』
【あらすじ(要約)】
昔、牝鶏と雄鶏がいました。旅行することになり、四つの赤い車輪のきれいな車を作って、四匹のはつかねずみにひかせました。牝鶏は、雄鶏と一緒に車に乗り、夫婦で出掛けました。
程なく、猫に会い「どちらへお出掛け?」と言いました。
雄鶏が「村の外れのコルベスさまのお屋敷へ」と返事をすると「一緒に連れてって」と猫が言いました。
雄鶏は「ようござんすとも」と返事をし「落ちるといけないから後ろへ乗ってください。気を付けて、赤い車輪を汚さないように。車輪、行けや。おねず、チューチュー鳴け。村の外れのコルベスさまのお屋敷へ」
それから、石臼がやってきました。その次に卵、鴨、留針、それから最後に縫針がやってきて、皆車に乗り転がって行きました。
けれども、コルベスさまの家に着くと、コルベスさまは留守でした。ねずみたちは車を納屋に入れ、牝鶏は雄鶏と一緒に屋根のはりに飛び、猫は暖炉の中に丸くなり、鴨は水桶の中へ、卵は手拭いの中へくるまり、留針は椅子の布団に刺さり、縫針はベッドに飛び乗り枕の真ん中に刺さり、それから石臼は戸口の上に寝転びました。
そこへコルベスさまが帰ってきて、暖炉に火をおこそうとしたら、猫がコルベスさまの顔に灰をぶつけました。台所へ駆け込んで灰を洗い落とそうとしたら、鴨が水を顔へはねつけました。それを手拭いでふこうとしたら、卵が転がり出してきて、つぶれて目へべっとり貼りつきました。休もうと思い椅子に座ると、留針が刺しました。
コルベスさまは腹を立てて、ベッドにひっくり返りました。ところが、頭を枕にのせた途端に縫針が頭を突っついたので、喚きながら気違いのように滅茶苦茶に表に飛び出そうとしました。ところが、戸口へ差し掛かると、石臼が跳び下りてきて、コルベスさまをたたき殺しました。
コルベスさまという方は、よくよく悪い人だったに違いありません。
【ひとりごと】
「コルベスさま」とは、情けを知らない乱暴一途の怖い人と言い伝えられているそうです。
KHM10「ならずもの」と似ていますね。何となく猿蟹合戦とも。
これは何かの復讐だったのか。前段があるのですかね。殺されたコルベスさまは、何もわからずに逝ってしまいましたね。
でも、旅に出掛けた張本人(鶏?)の雄鶏牝鶏は、懲らしめている最中、何をしていたのか。自ら手は下さず、見守っていたのかな。