ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『六羽の白鳥』

『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その53

『六羽の白鳥〈KHM49〉』

あらすじ(要約)

 昔、ある王様が森で狩りをしていました。獲物をわき目もふらず追い、家来は後に続くことができませんでした。日が暮れ、道に迷ったことがわかりました。

 そのとき、婆さんがやってくるのが見えました。それは魔女でした。

「お婆さん、森を抜ける道を教えてもらえませんか」と王様が声をかけました。

「いいですよ、王様」と老婆は答えました。「一つ条件があります。もしその約束をしなければ、この森から出られず、餓死することになります」「どんな条件かの」と王様が尋ねました。

「私には娘がいる」と老婆は言いました。「娘は美しく、王様のお妃になるうってつけの女子です。お妃にするなら、森から出る道を教えます」

 王様は承知しました。すると老婆は王様を自分の家に案内しました。娘が囲炉裏端に座っていました。娘は王様を迎えました。娘は美しいが、王様は気に入りませんでした。娘を眺めるとぞっとせずにいられなかったのです。

 老婆は王様に道を教えました。王様は城へ帰って結婚式を挙げました。


 王様は前に結婚したことがあって、子供が7人いました。男の子6人、女の子1人で、とてもかわいがっていました。

 ところが、新しいお妃、この継母は子供たちにやさしくしないどころか、どうかされでもしたら大変だと思ったので、皆を森の中の城に移してしまいました。

 その城はわかりにくく、王様でさえ神通力を持ったある女が、不思議な力のある糸の玉をくれなかったら、見つけられなかったのです。この糸玉は投げるとほどけて、道を教えてくれるのでした。

 王様はよく子供たちのところに行くので、留守がお妃の目に付くようになりました。王様が森の中で何をしているのかお妃は知りたくて仕方ありません。お妃は王様の家来たちにお金をあげました。そうすると家来たちは、秘密を打ち明け、道しるべになる例の糸玉のことまで話しました。

 それからというもの、お妃はその糸玉のある場所を探り出すまでは落ち着きませんでしたが、在りかがわかると、白絹の襦袢を作りました。それから母親に魔術を習っていたので、襦袢の中に魔力を縫いこみました。

 

 ある時、王様が狩りに出掛けた後、お妃は襦袢を持って森へ入りました。糸玉は道を教えました。子供たちは、遠くから誰か来るのを見て、父が来たと思い、跳び出して行きました。すると、お妃は子供たち一人一人に襦袢を投げて、体に触れると子供たちは白鳥に化け、飛んでいってしまいました。

 お妃は喜んで家へ帰ってきました。ところが、女の子だけは兄たちと一緒に行かなかったので、お妃は女の子のことは知らずにいました。


 次の日、王様が子供たちに会いにきました。

「兄たちはどこだ?」と王様は尋ねました。

「どこかへ行っちゃったの。私だけ残して」

 女の子は、窓から見ていたら、兄たちが白鳥になったと話し、庭に落ちた羽を見せました。
 王様は悲しみ、女の子も盗られることを恐れ、一緒に連れて帰ろうとしました。けれども、女の子は継母が怖いので、森の城にもう一晩だけいたいと王様にお願いしました。
 女の子は、兄たちを探しに行こうと考えたのです。日が暮れると森の奥へ入りました。一晩中歩き、次の日も歩き続けたら一歩も歩けなくなりました。

 その時、小屋が一軒見えました。入ってみると、小さな寝台が6つ置いてありました。その一つの寝台の下へ這い込み、夜を過ごそうとしました。

 すると、日が沈む頃に6羽の白鳥が窓から飛び込んできました。白鳥は床に下り、お互いに息を吹きかけ、羽を全部吹き落とすと、白鳥の皮が脱げました。それを見ると、兄たちだとわかり、女の子は喜び、寝台の下から這い出しました。

 妹の姿を見た兄たちは喜びましたが「ここはお前がいるとこじゃない。ここは強盗たちの隠れ家だ。殺されてしまうよ」と言いました。

「私を守れないの」と妹は聞いてみました。

「だめだよ。白鳥の皮を脱いでいられるのは、毎晩15分だけ。また白鳥にされちまうんだ」
 妹は「救えないの」と言いました。

「難しい条件がある。お前は6年間、口をきいてはいけない、笑ってもいけない、その間にえぞ菊の花を縫い合わせて僕たちの襦袢を6枚こしらえなくちゃならない。たった一言でもお前の口から言葉が出たら、それまでの仕事は無駄になる」と兄たちは答えました。

 これでけ言うと15分がたち、兄たちは白鳥になって飛んで出て行きました。

 女の子は兄たちを救い出そうと固く心に決めました。小屋を出て、森の真ん中の木の上に座るとそこで夜を過ごしました。

 

 明朝、えぞ菊を集め、襦袢を縫い始めました。長い間そこで暮らしてからのことです。その国の王様がこの森で狩りをして、狩人たちが女の子の座っている木のところに来ました。

 狩人たちは「何者だ、お前は」と言いました。けれども何の返事もありません。

「降りておいで」と狩人たちが言いました。

 娘は頭を横に振るだけです。狩人たちは木に登ってきて、娘を抱き下ろして王様の前に連れてきました。

 王様は「木の上で何をしている」と尋ねました。

 娘は返事をしません。魚のように黙っていました。けれども娘は美しかったので、王様は心を動かされました。娘に外套を羽織らせ、お城に連れて行きました。

 城に着くと、娘に立派な衣装を着せました。美しい娘は真昼のように輝きましたが、一言も言葉を引き出せませんでした。

 食事のとき、王様は娘を隣に座らせました。その慎ましやかな顔と物腰のしとやかなことがすっかり気に入り「私の妻にしたいのは、この女性。他にはいない」と言いました。それから何日かして、王様は娘と結婚しました。
 ところが、王様には悪魔のような母親がいて、この結婚をよく思わず、若いお妃を悪く言いました。

「口のきけない娘、どこの馬の骨だかわかったものでない」

 これが母親の言いぐさでしたが、お妃が初めての子を産むと、婆様はその子を奪って、眠っている間にお妃の口に血を塗りました。こうしておいてから、母親は王様にお妃は人間を食べると告げ口をしました。

 王様はそれを信じず、お妃をいじめるのが嫌でなりませんでした。お妃はまた、座ったまま襦袢を縫うばかりで、何一つ気にかけません。

 その次に、お妃がまた美しい男の子を産むと、姑は同じように王様を騙しました。けれども、王様は母親の言葉を信じず「妃はそんなことをするはずがない。もし口がきけるなら、無実が明らかになるだろう」と言いました。
 けれども、3度目にまた、婆様が赤ん坊を奪い取って、お妃の罪を訴えたとき、やはり一言も言い開きをしなかったので、王様も仕方なく、お妃を裁判にかけました。法廷はお妃を火あぶりの死刑にするとの宣告を下しました。


 刑が執行される日が来ましたが、その日はお妃が話しても笑ってもいけない6年間の最後の日でした。そして兄たちを魔術から救い出していたのでした。6枚の襦袢も最後の物の左袖がついていないだけで、あとは残らずできあがっています。

 火あぶりの刑場へ連れ出されるとき、お妃はこの襦袢を腕にかけました。高い所に立って、火がかけられようというとき、6羽の白鳥が飛んできました。

 白鳥はお妃のところへ降りたので、お妃は白鳥たちの体へ襦袢をかけることができました。襦袢が体に触ると、白鳥の皮は脱げ落ち、兄たちが人間の体でお妃の前に立っていました。一番年下の兄だけは左腕がなく、その代わりに白鳥の翼が背中に生えていました。兄妹は抱き合いキスしました。

 お妃は王様に話を始め「殿様、私は口がきけるようになりました。私は無実を申し上げられる身になりました」と言い、婆様が3人の子供を奪い取り、どこかへ隠して王様を騙したことを話しました。

 そこで、子供たちが連れてこられ、王様は喜びました。姑は、罰として木に縛り付けられ、焼き殺され灰になりました。王様とお妃は、6人の兄たちと一緒に長い間幸福に仲良く暮らしました。

ひとりごと

 忍耐、兄妹愛、自己犠牲はどの物語も共通していますね。そして困難を乗り越える強さ。

 正しい心を持ち続ければ、やがて真実が明らかになる、いつでもそうあってほしいですね。

 それにしても、父親の王様はその後どうなったのか。そして継母は。気になるところ。