ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『つぐみのひげの王さま』

『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その56

『つぐみのひげの王さま〈KHM52〉』

あらすじ(要約)

 どこかの王様が、姫をもっていました。姫は美人ですが、気位が高く威張っていて、嫁にほしいと言っても相手にしませんでした。一人ひとりに肘鉄砲を食わせからかうのです。


 あるとき、王様は宴会を催し、姫を嫁にほしいという人たちを招きました。呼ばれた人たちは、身分に従って一列に並び整列すると、姫は誰を見ても欠点を探し出すのでした。

初めは太りすぎで「酒樽」

背が高すぎると「背高のっぽは、ふらふら」

背が低すぎて「ずんぐりみじかの、ぶきっちょう」

血の気がなさすぎて「死神の青んぞう」

赤すぎて「小作料代わりのにわとり」

体が真直ぐでないので「ストーブの後ろで乾かした生木」

 こんな具合に欠点を探し出すのですが、上席にいた気立てのいい王様は顎が少し曲がっていました。

「あの方の顎、まるでつぐみのくちばしよ」姫はこう言って笑いました。

 その時からこの王様は「つぐみのひげ」という名前をもらいましたが、父の王様は、自分の娘は皆をからかうばかりで、集まった婿の候補者たちに恥をかかせたのを見て腹を立て、最初に戸口に来た乞食を捕まえて、おまえの婿にしてやると約束しました。


 2、3日後、町楽師が窓の下で歌い出しました。その声を聞くと王様が「ここへ通せ」と言いました。

 町楽師は汚い、ぼろぼろの着物を着たまま入ってきて、王様と姫の前で歌い施しを求めました。

 王様は「おまえの歌が気に入ったから、わしの娘を妻にやろう」と言いました。姫はぎょっとしました。

 王様は「わしは最初にきた乞食におまえをくれてやると誓いを立ててある」と言って、何と苦情を言ってもだめです。牧師がよばれ、姫は否応なしに町楽師と結婚させられました。

 式がすむと王様は「おまえはもう乞食の女房なのだから、この屋敷にいるのはおかしい。亭主とどこへなりと行くがよい」と言いました。
 乞食は姫を外へ連れ出しました。二人が森に入ったとき、姫が訊ねました。

「この森はどなたの?」

「つぐみのひげの王様さ。あの人をお前が亭主にしていたら、おまえのものなのに」

「かわいそうな姫、つぐみのひげの王様にすればよかったのに」


 やがて草原を通りました。すると姫がまた訊ねました。

「この青々した草原はどなたの?」

「つぐみのひげの王様さ。あの人をお前が亭主にしていたら、おまえのものなのに」

「かわいそうな姫、つぐみのひげの王様にすればよかったのに」

 

 その次には、大きな都を通り抜けました。するとまた姫が訊ねました。

「この大きな都はどなたの?」

「つぐみのひげの王様さ。あの人をお前が亭主にしていたら、おまえのものなのに」

「かわいそうな姫、つぐみのひげの王様にすればよかったのに」

「気に食わないったら、ない」と町楽師が言いました。「おまえときたら、いつも別の亭主を持ちたがる。俺では我慢できないのか」


 やっと小さな家へたどり着きました。すると姫が言いました。

「ちっぽけな家だこと。みすぼらしい家、誰のかしら」

「これが俺の家、おまえの家だよ。一緒に暮らすところさ」
「召使たちはどこに?」

「召使だって?おまえが自分でするのさ。火をおこして食べ物を煮てくれよ」

 そう言われても姫は、どうしたらいいのかわからないので、乞食は手を出して、どうにか間に合わせました。

 粗末な食事を終えると二人は寝床に横になりましたが、姫は家事をする役なので、朝になると乞食は朝早く姫を起こしました。


 5、6日暮らしているうちに蓄えがなくなりました。亭主は「二人、食べるばかりで稼がないでは、やっていけない。かごを編みなさい」と言いました。

 亭主は外へ出て、柳を切り家へ持ってきました。姫はそれを編みはじめ、固い枝が華奢な手を突いて怪我しました。
「糸を紡いでごらん。それならうまくいくかもしれない」と亭主が言いました。

 姫は試しに糸を紡いでみました。固い糸は柔らかい指に食い込んで血が出ました。

「おまえは、何一つ仕事ができない。嫁にしてひどい目にあった。今度は壺や皿小鉢の商いをしようと思う。おまえが市場で売るのだよ」と亭主は言いました。

 姫は、市場に父の国の人たちがきて、自分が物を売っているのをみたらばかにするでしょうね、と考えました。


 店開きのときはうまくいきました。女がきれいだったので客は喜んで買い、言い値で払ったからです。

 稼いだお金がある間はそれで暮らし、亭主はまた新しい皿小鉢を仕入れました。女は市場の曲がり角に座り並べて売り出しました。するとそこへ、酔っ払った驃騎兵が馬を乗り入れたので、品物は粉々になりました。女は泣き出し「困った、どんな目にあうかしら」と大声を上げました。「こんなことになって夫は何て言うでしょう」

 女は帰って話しました。

「瀬戸物を持って市場の曲がり角に座るやつがあるか」と亭主が言いました。

「泣くのはおよし。人並みの仕事が何一つできないんだな。王様の御殿へ行って、女中の仕事はないかと聞いてきたんだ。おまえを使ってくれると言うんだ。そうすればただで食べ物が食べられるんだ」と男は言いました。 

 姫は女中になり、料理の手伝いをして立ち働きをすることになりました。いただいたご馳走の余りを持ち帰って、二人で食べました。


 そのうち、王様の一番上の王子の結婚式が行われることになり、この不幸せな女も見物するつもりで大広間の戸の外に立ちました。燈火が灯されて、入ってくる客の一人を美しいと思えば、後から後からだんだん美しくなっていく人々が入っていき、辺りが光り輝いて素晴らしい様子になったのを見ると、女はすっかり陰気になって自分の運命を考え、自分をこんな賤しい身分にして、こんなひどい貧乏な中へ突き落した自分の気位の高さ、自分の慢心を呪いました。
 素晴らしい料理が運ばれ、その料理を給仕が少し投げてくれるのを女は持ち帰るつもりでいました。
 そこへ王子が入ってきました。王子は美しい女が入口に立っているのを見ると、手をつかみ、踊り相手にするのだとききません。

 女はいやだと言いましたが、この王子が以前、自分を嫁にほしいと言ったのをからかって肘鉄砲を食わせた、あの「つぐみのひげの王様」だとわかったので、驚きました。

 女は嫌がりもがきましたが、王子は広間へ引っ張り込むと、女がもらった料理を入れた壺を括り付けていた紐が切れて、壺が落ち、スープが流れ、料理の切れ端が飛び散り、人々が笑って口々に罵り合うので、女は恥ずかしくて穴の中へ入ってしまいたいと思いました。

 逃げ出そうとすると、男が追いついて女を引き戻しました。その顔を見ると、それは「つぐみのひげの王様」なのです。

 つぐみのひげの王様は話しかけました。

「怖がらなくていい。あのみすぼらしい小屋に住んでいた町楽師と私は同じなのさ。おまえかわいさのあまりに姿を変えていたので、あの驃騎兵、馬で壺を粉々にした兵隊、あれも私だったのさ。気位の高いおまえの心をへし曲げるために、私をばかにしたおまえの慢心を罰するためにしくんだのだよ」
 これを聞くと女は泣いて「とんだ間違いをしました。お妃としての値打ちはございません」と言いました。

 王子は「安心しなさい。悪い日は過ぎ去った。今度は私たちの結婚式をするのさ」と言いました。

 そこへ、お妃に美しい衣装を着せ、父親と家来たちも皆来て、つぐみのひげの王様との結婚を祝福し、本当の喜びが始まりました。あなたも私もそこに行っていたらよかったと思いますね。

ひとりごと

 相手の外見や地位だけで価値をはかる傲慢さが、最終的に自分に跳ね返ってきました。大切なのは、見かけにとらわれず心を見ること、他者を思いやること、ですかね。

 そして、「気づき」を与えるための厳しさ。その中に真の愛があり、成長は試練を経てこそ、なのでしょう。

 人は、わかったふりしても、何事も経験・苦労なしには進みませんね。