『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その57
『雪白姫〈KHM53〉』
あらすじ(要約)
昔、冬のさなかでした。どこかの国のお妃が針仕事をしていました。針で指を刺して、血が雪の中に垂れました。美しかったので「雪のように白く、血のように赤く、窓枠の木のように黒い子供がいたら嬉しいねえ」と思いました。
お妃は女の子を産みました。雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒髪だったので、「ゆきじろひめ」と名付けました。そして、お妃は死んでしまいました。
一年後、王様は新しい妻を迎えました。美しい人でしたが、気位が高く、自分より美しいのは我慢できませんでした。
お妃は不思議な鏡を持っていて、映る自分を見て「鏡や、国中で一番美しいのは誰?」と声をかけると「お妃様こそ、一番美しい」と返事をしました。これを聞き、お妃は安心しました。
雪白姫は美しくなるばかりで、7歳のときにはお妃よりも美しくなりました。
お妃が鏡にたずねると「お妃様がここでは一番美しい。でも雪白姫はお妃様よりもっと美しい」と返事をしました。
お妃は、この時から雪白姫を見るたび憎らしく思いました。
お妃は狩人を呼び「あの子を森へ連れ出して殺し、肺と肝臓を持ってきなさい」と言いつけました。狩人は姫を連れ出し、山刀で心臓を突き刺そうとすると、娘は「殺さないで。もう二度と家へ帰らないから」と言いました。猟師はかわしそうになり「どこかへ行っておしまい」と言いました。
それからその場へ猪の子が走ってきたので刺し殺し、肺と肝臓をとってお妃に持って帰りました。悪魔のような女は雪白姫の肺と肝臓と思い、食べてしまいました。
姫は森の中で小さな家が見つかったので、中へ入りました。家の中のものは小さいのですが、きれいでした。食卓に7枚の小さな皿に小さなスプーン、7個のナイフ、フォークがありました。壁際に7つの小さな寝台がありました。
雪白姫は空腹で、それぞれの皿から野菜やパンを少し食べ、それぞれの杯からぶどう酒を一滴ずつ飲みました。それから、7番目の寝台がちょうどよかったので、寝てしまいました。
暗くなって、家の小さな主たちが帰ってきました。山を掘り鉱石を探していた一寸法師です。小さな燈火を7つ灯しました。誰か中に入ったと気付きました。
一人が「誰がおいらの椅子に腰かけたんだい」
二人目が「誰だい、皿のものを食べたのは」
三人目が「おいらのパンをとったんだな」
四人目が「誰だろ、おいらの野菜を食べたのは」
五人目が「誰がフォークを使ったんだ」
六人目が「誰だい、おいらのナイフで切ったやつ」
七人目が「誰がおいらの杯で飲んだのかね」と言いました。
それから見回すと、寝台に小さな窪みがあるのが見えました。
「誰がおいらの寝台に入ったのかな」
わいわい言い出しました。
七人目が自分の寝台を覗くと雪白姫を見つけました。7つの燈火で雪白姫を照らしてみました。
「こいつはたまげた!この子どものきれいなことったら」と言い、嬉しくて女の子は起こさず、寝かせておきました。
朝になり雪白姫は目を覚ましました。7人の一寸法師は親切で「なんて名前だね」とたずねました。
「ゆきじろっていうの」
「どうしてこの家に来たんだい」
雪白姫は継母が自分を殺させようとしたが、狩人が命を助けてくれた、ということを話しました。
「煮炊きや洗濯、針仕事など、おいらたちの面倒を見てくれるなら、このうちにずっといていい」
「ええ、やりますとも」
雪白姫はこう言って、このうちにいました。
一寸法師たちは山に行き、夜に戻ってきました。雪白姫は一日中一人でした。親切な一寸法師たちは「継母に気をつけるのだよ。誰も家に入れないんだよ」と言いました。
ところでお妃は、いつもの鏡の前でたずねました。
鏡は「お妃様がここでは一番美しい。でも山の向こうの7人の一寸法師のうちにいる雪白姫は、お妃様よりもっと美しい」と返事をしました。
お妃は、狩人が自分を騙し、雪白姫がまだ生きていると気付きました。お妃はどうやって雪白姫を殺そうかと考えました。
そのうち考え出して、自分の顔に絵具を塗り、婆さんのような服装をしたので、お妃は見分けがつかなくなりました。
この姿で、一寸法師たちのうちへ行き「きれいな小間物はよろしいかな」と呼び立てました。
雪白姫は「何を売ってるの?」と呼び寄せました。
「きれいな品物。いろんな色の胸ひも」
婆さんは五色の絹糸で編んだ紐を取り出しました。
雪白姫は戸のかんぬきを外し、きれいな胸ひもを買いました。
「嬢ちゃん、べっぴんさんだこと。結んであげましょう」
雪白姫は新しい紐で結んでもらいました。婆さんは手早くぎゅっと結んだので、雪白姫は息ができなくなり死んだように倒れました。
「これで私は元通り国一番の器量良しさ」と婆さんは言って出て行きました。
夜に7人の一寸法師が帰ってきましたが、雪白姫を見て驚きました。動かないのです。体を持ち上げると、胸が締め付けられていたので胸ひもを切りました。すると息をし始め、生き返りました。
出来事を聞くと「小間物屋の婆さんはお妃に決まってるさ。おいらたちがそばにいないときは誰も家に入れないように」と言いました。
悪魔のような女は、鏡にたずねました。
すると鏡は前と同じように「雪白姫はお妃様よりもっと美しい」と返事をしました。これを聞き、雪白姫が生き返ったことがわかりました。
「お前の命をとる方法を考え出してやるぞ」とお妃は言い、魔法で毒の櫛を作りました。
それから服装を変えて、7人の一寸法師のうちへ行き「上等な品物はいかが?」と呼び立てました。
雪白姫は「誰もうちの中へ入れられないのよ」と言いました。
「でも見るだけならいいでしょう」
婆さんは毒の櫛を取り出して見せました。それを見ると気に入ったので、騙されて戸を開けました。買うことに決まると「それでは婆が髪を梳いてあげましょ」
婆さんが髪に櫛を入れた途端、毒がまわって姫は気を失って倒れました。
「おまえは今度こそお陀仏だよ」
大悪者の女はこう言い帰って行きました。
日が暮れて、一寸法師たちが帰ってきました。雪白姫が倒れているのを見たとき、継母のことを疑い、探ってみたら毒の櫛が見つかりました。それを抜き取ったら雪白姫は息を吹き返し、起こったことを話しました。
お妃は鏡にたずねました。
鏡は前と同じように「雪白姫はお妃よりもっと美しい」と返事をしました。
お妃は腹が立って「雪白のやつ、どうしても殺してやる」
お妃は、とても毒のある林檎を作りました。地が白くて頬っぺたが赤く、見かけはきれいで、誰も食べたくなるけれど、一口食べたら必ず死ぬことになるのです。
お妃は顔に絵具を塗り、農家の着物に着替え、一寸法師たちのうちへ行きました。戸を叩くと、雪白姫は窓から頭を出し「どんな人も中へ入れられないの」と言いました。
「持ってる林檎を一つあげるよ」と女は言いました。
「いらない。何ももらえないの」
「毒が入っていると思うのかい?林檎を半分に切るよ。赤い方を食べな。白い方をおばさんが食べる」
林檎は赤い方に毒が入っていたのです。雪白姫は食べたくて、おばさんが食べたのを見ると我慢ができなくなり、手を出して貰いました。口に入れた途端、倒れて死んでしまいました。
お妃は恐ろしい顔で姫を見て笑い出し「今度こそ一寸法師の奴らだってお前を二度と目覚めさせられないよ」と言いました。
お妃は鏡にたずねました。
鏡はついに「お妃様こそこの国で一番美しい」と返事をしました。
これを聞いてお妃の妬み深い心が落ち着きました。
一寸法師たちが帰ってきて、雪白姫を見つけました。もう息をしていなくて死んでいました。できることをやってみましたが、死んだままでした。
雪白姫を棺台に寝かせ、7人は悲しみました。葬ろうとしましたが、生きているように見え、美しい赤い頬をしていました。
「黒い泥の中へ埋められないよ」
一寸法師たちはガラスの棺をつくり、姫を寝かし、金文字で名前を書き、王様の娘と記しました。棺を山の上に置いて、一人ずついつまでもそばにいて番をしました。
雪白姫は長い間、棺の中に入っていましたが、眠っているようでした。
ある時、どこかの国の王子が森に迷い込み、一寸法師たちの家にきました。王子は山の上の棺と美しい雪白姫に目が止まりました。
「この棺を譲ってください。お礼はいくらでもします」
「世界中の金をもらってもあげない」
王子は「それなら、無償でください。雪白姫を見ないで生きられない。大切にする」と言いました。
気の優しい一寸法師たちは、王子を察して棺をあげました。
王子は、家来に担がせて棺を持って行きました。家来たちが躓いた拍子に棺が揺れて、雪白姫が食べた毒林檎のかけらが喉から出ました。
間もなく姫は目を開け、生き返ったのです。
「あたし、どこにいるの」と姫は声を立てました。
王子は嬉しくて「あなたは僕のそばにいる」と言って「僕は世界中の何よりもあなたを大切にする。僕と一緒に父の城へ来てください」と言いました。
雪白姫も王子を愛しく思って、一緒に行きました。二人の婚礼の支度が整えられました。
ところが、祝宴には雪白姫の継母も招かれました。出掛ける時に鏡にたずねました。
鏡は「お妃様はここで一番美しい。でも若いお妃様はもっと美しい」と返事をしました。
悪魔のような女は「ちくしょう」と口走り、婚礼の席に出るのはよそうと思いましたが、若いお妃を見ずにはいられなかったのです。
若いお妃というのは、まぎれもない雪白姫でした。お妃は立ちすくんだまま身動きもできません。けれども、この時、鉄の靴が炭火にのせてあって、お妃はその真っ赤に焼ける靴を履かされて、熱さに耐えられず踊り狂って息絶えて倒れました。
ひとりごと
これは有名な「白雪姫」のお話ですね。(原話では「雪白姫」になっています)
グリムの原典では、ディズニーと違い最後は激しい制裁があります。嫉妬・傲慢⇒破滅というお決まりの道徳的構造。
嫉妬・虚栄心は破滅を招きます。外見のみの美を競う愚かさ、ですね。
