ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『背嚢と帽子と角ぶえ』

『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その58

『背嚢と帽子と角ぶえ〈KHM54〉』

あらすじ(要約)

 昔、三人兄弟がいました。だんだん貧しくなり、何一つ食べるものがなくなりました。

「世間に出て運だめしをしたほうがいい」と三人は旅に出ました。

 

 ある日、大きな森に着きました。森の山が銀でできていることがわかりました。

 長男は「運を見つけた」と言い、銀を持てるだけ取ると家に帰りました。
 他の二人は「もっと気のきいた物がほしい」と先へ歩きました。

 いく日か歩いたら、黄金の山に出ました。次男は考え込み「この黄金を一生不自由しないだけもらっていくか、それとも先に行っちまうか」

 次男は腹を決め、黄金をポケットに入るだけ詰め込み、家に帰りました。
 三男は「もっといい運を授かるかもしれない」と先へ歩きました。

 三日歩くと、もっと大きな森に入り込みました。飲み食いするものがなく、餓え死にしそうでした。森のはずれが見えるか高い木に登ってみましたが、何も見えませんでした。

「もう一度お腹いっぱいにできたらなあ」

 木から下りると、食卓が一つあって料理から湯気が立ちのぼっていました。

「願いがうまいときに叶った」

 誰がその食べ物を持ってきて料理したか、構わず食べました。

「こんな食卓布が森の中で台無しになったら惜しい」と考え、たたんでポケットに入れました。

 

 また歩き日が暮れ、空腹になると、その布を試してみようと、広げて「もう一度ご馳走乗っかりますように」と言いました。するとご馳走が乗った皿が布の上に並びました。

「銀や黄金の山よりお前のほうが好きだよ」

 でも、この布だけで落ち着くわけにはいきません。弟はもっと世の中を巡り、自分の運を試してみるつもりでした。

 

 ある晩、森の中で炭焼きの男に会いました。

「こんばんは。どうですか、一人ぼっちの暮らしは?」と弟が声をかけました。
「明けても暮れても同じ。毎晩じゃがいもさ。食ってみたいか?客になるかい?」

「君の食事を横取りしないよ。君さえよかったら僕の方が君を招待しよう」

「誰に飯の支度をさせるのかね」と炭焼きは言いました。

「ところが食事ができるのさ」

 例の布を地面に広げ「おぜんかけや、御飯の支度」と言った途端、できたての煮物、焼き物が並びました。

 炭焼きは、一つ食べ二つ食べ、口の中に押し込む肉がだんだん大きくなりました。

 食べ終わると、炭焼きは「そのおぜんの布には感心した。誰も料理してくれる人がいない者にはもってこいだ。取替えっこしようや、兵隊の背嚢と。古い物だが、不思議な魔力が隠れている」と言いました。

「どんな不思議な魔力か聞いてからの話さ」
「こつこつと手でたたくと、上等兵が六人ずつ出てくる。鉄砲、剣も持っていて命令すると何でもやるのさ」

「どうでもいいが、取替っこしよう」

 布を炭焼きにやると、その背嚢を肩へ引っ掛け、別れを告げました。

 弟は、背嚢の不思議な力を試してみようと、こつこつとたたいてみました。すると兵隊が七人歩いてきて、上等兵が「殿様、御用でありますか」と言いました。

「目標は炭焼きの小屋。俺の御飯の支度の布を取り戻して来い」

 兵隊たちはまもなく所望の品を持ってきました。炭焼きの手から巻き上げたのです。弟は兵隊を引っ込め歩きました。

 

 日が沈む頃、また別の炭焼きのところにきました。晩御飯の支度をしていました。

「一緒に食いたければ、ここへ座れや」

「いや、今日はあなたを俺の客にしてやるよ」と言いながら、例の布を広げると、上等の料理が並びました。

 食事の後、炭焼きは「そこに小さな帽子がある。奇妙な力があって、被ってぐるりと回すと大砲が出て、何でもぶっ倒す。そのおぜんかけの布をくれれば、こいつをくれてやる」と言いました。
「それもよかろ」

 弟は帽子を手に取ると、例の布を置いていきました。

 しかし、立ち去るとすぐ背嚢をこつこつとたたき、兵隊たちはおぜんの布を取り返しに出掛けました。

「一つずつ増えるぞ。幸運はまだ尽きそうもなさそうだな」

 この考えは間違っていませんでした。

 

 一日歩くと、三人目の炭焼きのところに来ました。前と同じようにじゃがいもをご馳走すると言ってくれましたが、魔法の布の料理を一緒に食べさせました。

 炭焼きは食後、その布をくれるなら、小さな角笛をあげると言いました。

 それは吹くと、土塀でも石垣でも城でも、都市でもめちゃくちゃに壊れて山になるというのです。

 弟は角笛をもらって炭焼きに布をやりました。けれども後で、自分の兵隊たちを繰り出して取り返してしまったので、背嚢と帽子と角笛とを一手に集めてしまいました。

「これで、兄たちがどうしているか見るときがきた」

 

 弟が家に帰ると、兄たちは金銀で立派な家を建てて、飲めや歌えのだらしない日を送っていました。

 弟はぼろぼろの上着を着て、みすぼらしい帽子をかぶり、古い背嚢を背負ってやってきたので、兄たちは弟ではないと、受け付けませんでした。

「お前は金銀を見下し、自分はもっといい運を取ると言った俺たちの弟だと言うんだな。弟ならきれいに着飾って、王様になって馬車で乗りつけるに決まってる。乞食の姿で来るものか」と言って外へ追い出しました。

 弟は腹を立て、背嚢をこつこつたたくうちに百五十人の兵隊が立ちました。

 兄たちの家を取り巻くよう命令しました。そのうち二人はハシバミ棒を持っていて、高慢な兄たちを打ち据え、自分がどんなに偉いか思い知らせてやれ、と言いました。

 恐ろしい騒ぎが起こり、とうとう王様のところへ知らせが行くと、王様は怒り出して兵を率いて進み、治安を乱す輩を都から追い出すよう命じましたが、背嚢を持つ弟はたちまちたくさんの兵隊を集めて反撃してくるので、引き下がらなければなりませんでした。

 王様は次の日、さらに大軍を送りましたが、前の日よりもっとみじめでした。

 弟はたくさんの軍勢のほか、早く終わらせるため、帽子を頭の上で2、3度回し、大砲で王様の兵隊は総崩れになりました。
「こうなったら、王様が姫を俺の嫁にくれて、国を支配するまでは和睦なんかしないぞ」と言い、王様に通じました。

 王様は姫に「やつの望むとおりにするほかない。平和を保つにはそなたをあげなければならん」と言いました。


 それで婚礼の式が挙げられました。

 姫は夫がどこの馬の骨かわからない男でみすぼらしい帽子をかぶり、古びた背嚢を背負っているのが嫌でなりません。こんな男を厄介払いしたくて、知恵を絞りました。

「不思議な力はあの背嚢にあるのかしら」と思いました。猫を被って甘えてみました。

「こんな下等な背嚢なんか下ろしておしまいになれば。そのせいであなたは汚いのよ」

「この背嚢は一番の宝物だよ。これがあれば世界に何にも怖ろしいものはない」

 殿様は背嚢がどんな不思議な力を授かっているのか姫に打ち明けました。

 それを聞くと姫は、殿様の首へキスをするように見せかけ、肩から背嚢を外すとそれを持って逃げてしまいました。

 

 姫は背嚢をたたいて、出てきた兵隊たちに元の主人を捕まえて御殿から連れ出すように命令しました。兵隊たちは従いました。

 ところが女は悪いやつで、兵隊をもっと出して殿様を国外へ追い出すよう言いつけました。

 これでは例の帽子を持ってなかったら殿様は助からなかったでしょう。両手が自由になって帽子をぐるぐる回すと、大砲が鳴り出して、そこにいた者を一人残らず叩き倒したので、姫は命乞いをしなければなりませんでした。

 姫は心を入れかえると誓ったので、殿様も仲直りすることを承知しました。


 姫は殿様と仲良くするように見せかけました。そして、殿様はすっかり化かされ信用してしまい、たとえ背嚢を奪われてもこの古帽子がある限り、自分に敵対できないということを打ち明けてしまいました。

 姫は、殿様が寝静まるのを待って帽子をとって捨てました。けれどもまだ角笛が残っています。殿様は怒り、力任せに角笛を吹きました。
 その途端に土塀も石垣も城も砦も都市もぶっ倒れて、王様と姫を叩き殺してしまいました。もう少し吹き続けたら、がらくたの山が出来上がり、石も重なっていないと思います。

 殿様に向かう者は誰一人としてなく、自分が王様になり国を支配しました。

ひとりごと

 三男の行動は必ずしも善とは言えませんね。

 物語は、真の強さ・幸せは権力や腕力ではなく、勇気や知恵から生まれることを示しているのでしょうか。

 不思議な道具の一つ「角ぶえ」は、核兵器のような力を象徴していて、物語全体が現代社会にも通じるテーマを感じますね。