『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その61
『がたがたの竹馬こぞう〈KHM55〉』
あらすじ(要約)
昔、あるところに粉ひきがありました。貧乏でしたが、美しい娘が一人いました。
粉ひきが王様と話すときがあって、威張ってみたくなり「娘を一人持っていますが、取柄は藁をつむいで黄金にすることです」
王様は「それは巧みな業だ。娘を明日、わしの城に連れてまいれ」と言いました。
娘は連れて来られると、王様は藁のいっぱい入っている部屋に案内し、紡車と糸わくを渡して「明日の朝までに藁をつむいで黄金にしなければ、お前は死ぬのだぞ」と言いました。娘は途方にくれました。
藁をつむいで黄金にするなんて、見当がつきません。とうとう泣き出しました。すると、いきなり戸が開きました。それは、小さな男の人が一人入ってきて「何でそんなに泣きなさる」と声をかけました。
「藁をつむいで黄金にしろって言いつかったけど、どうしたらいいかわからないんですもの」
「お前、おいらに何くれる?代わりに黄金を紡ったらさ」
「あたしの首飾り」
一寸法師は首飾りもらって、紡車の前に座り三べん回すと、糸巻はいっぱいに巻ききれました。それから二つ目もすっかり巻け、朝まで続けたら藁は一本残らず紡がれ、糸巻には黄金の糸がいっぱい巻き付けられました。
王様がやってきて、この黄金の糸を見ると大喜びでしたが、もっと黄金が欲しくなりました。娘を藁のいっぱい入っている別の部屋に連れて行きました。ここでも、命が惜しければ、明日の朝までに紡げと命令しました。
泣いていると、また例の小さな人が現れて「おいらに何くれる?代わりに黄金を紡ったらさ」
「あたしの指輪」
一寸法師は指輪をもらって、次の日の朝までに藁を黄金にしました。
王様は喜びましたが、まだまだ飽き足らず、娘を藁の詰まっているもっともっと大きな部屋に連れていき「今夜中に紡いでしまうのだ。うまくいったら、お前を妻にしてやる」と言いました。
一寸法師がまたやってきて「おいらに何くれる?代わりに藁を紡いでやったらさ」
「あげられるものは、もう何にもない」
「では、お前がお妃になったら、一番初めの子供をくれると約束おしよ」
娘は、そんなこと、どうなるか分からないと考え、自分が困っているときなので、
一寸法師の望むことを約束し、藁を紡いで黄金の糸にしてもらいました。
王様は望んだとおりになっているのを見て、娘と結婚式を挙げました。
一年経って、お妃は美しい子供を産みましたが、一寸法師のことはもう忘れていました。ところが、一寸法師が部屋に入ってきて「さあ、約束したものをおいらにおくれ」と言いました。
お妃は子供をとらずにいてくれるなら、国中の宝物をみんなあげると言いました。けれども、一寸法師は「だめだよ、世界中の宝物よりも、生きてるものの方が好きなんだ」と言うのです。
お妃は悲しんで泣き出したので、一寸法師もかわいそうになって「三日だけ待ってやろう。もしその間においらの名前が分かったら、子供を取らずにおいてやろう」と言いました。
お妃は、今まで聞いた名前を思い出してみました。お国中歩き回って、他の名前があったら聞き出してくるように言いつけて、使いの者を一人出しました。
あくる日、一寸法師が来た時に、お妃はカスパールかい、メルヒオールかい、バルツェルかい、と自分の知ってる名前を並べてましたが、どれを聞いても一寸法師は「そんな名前じゃないよ」と言うばかりでした。
2日目には、近所の人たちの名前を聞かせましたが、「そんな名前じゃないよ」
3日目には、使いの者が戻ってきて「新しい名前は見つからなかったが、ある山の麓の行き当たり、そこに小さな家があって、焚火の周りをおかしな一寸法師が飛び跳ねながら、”今日はパン焼き、明日は杜氏、あさっては引っつらう妃の小わっぱ、やんれうれしや、おれの名が、がたがたの竹馬こぞうとぬかすのをどいつもこいつも知り申さぬ”と喚いておりました」と話しました。
お妃がこの名前を聞いて、どんなに喜んだことか。
そこへ一寸法師がやってきて「おいらの名前はなんてえの?」と問いかけました。
お妃は初め、「クンツってえの?」と聞いてみました。
「ちがう」
「ハインツってえの?」
「ちがう」
「ルンペルシティルツヒェン(がたがたの竹馬こぞう)とでもいうのかえ?」
「悪魔のやろうが教えやがったな」
一寸法師はこう喚きながら、腹立ちまぎれに地べたをどんと踏んだら体が腰まで埋まりました。そうすると気違いのようになって、左の足を両手で掴むと、自分の体を自分で真っ二つに引き裂いてしまいました。
ひとりごと
この一寸法師とは”コーボルト”という名で知られている妖魔。条件が履行されないと子供をさらったり、目玉をくりぬかれたり。でも、この地下界の魔物は自分の名前を知られると魔力が消えうせるそうです。
困っているときほど、「条件付きの救い」には注意しなければいけませんね。
