ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『恋人ローランド』

『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その62

『恋人ローランド〈KHM56〉』

あらすじ(要約)

 昔、一人の女がいました。魔法使いで娘を二人もっていました。一人は醜く意地悪ですが、実の娘なので可愛がりました。もう一人は美しく気立てがいいのですが、継娘なので憎みました。

 

 継娘がきれいなエプロンを持っていました。実の娘が羨ましくて、あれが欲しいと母にだだをこねました。

「お前のものにしてあげる。今夜姉ちゃんが寝たら、首をちょん切ってやる。お前は床の後ろの方に寝て、姉ちゃんを前の方に押し出しておくんだよ」と婆さんは言いました。

 継娘は、隅っこで立ち聞きしてしまいました。
 

 娘は寝る時間がくると先にベッドへ入り、後ろへ寝転べるようにしました。けれども、妹が寝てしまうと、継娘は妹を前に押し出して、自分は壁際に引っ込んでいました。

 夜中に婆さんがやってきました。斧を持ち、両手に握り直すと、滅多打ちにして自分の子の首をちょん切ってしまいました。
 婆さんが立ち去ると、娘は起きて、ローランドという恋人のところに行きました。

 娘は「私たちは急いで逃げなくちゃ。継母が私を殺すつもりだったんだけど、自分の娘を殺しちゃったの。夜が明けて継母が気付いたら、私たち助からない」と言いました。

「逃げる前に継母の魔法の杖を盗っといでよ。さもなきゃ、追いかけてきたら助からない」とローランドが言いました。

 娘は魔法の杖を取りに行き、ついでに死人の首をもって、床に血を三滴たらしました。ベッドの前、台所、階段です。それから、恋人と逃げ出しました。


 明朝、婆さんはエプロンをやろうと娘を呼びましたが、娘は出てきません。

「どこにいるんだい」

「ここよ、階段の上、掃除してるの」と、血の一滴が答えました。

「お前、どこにいるんだい」

「台所よ、体を暖めているとこ」と、二滴目の血が声を立てました。

「お前、どこにいるんだい」

「床の中よ、寝ているの」と、三滴目の血が大声で言いました。

 婆さんはベッドのそばへ行ってみました。実の娘が血まみれの姿でした。
 魔法使いは気違いのようになって窓際に行くと、どんな遠方まで見えるので、継娘が恋人のローランドと逃げていくのが見えました。

「いくら遠くへ行ったって逃げられないぞ」と怒鳴りました。

 婆さんは一里靴を履き、一股で一里歩いてたちまち二人に追いつきました。ところが、娘は魔法の杖を使って、恋人ローランドを湖に、自分はカモに化けて泳いでいました。
 魔法使いは岸辺でパン屑を投げ入れ、おびきよせようとしましたが、カモは誘いに乗らず、婆さんはおめおめと帰っていきました。

 

 婆さんが去ると、元の姿に戻り、夜明けまで歩き続けました。明るくなると、娘は美しい花に、恋人ローランドをバイオリン弾きに化けさせました。そこへ魔女がやってきて「楽人さん、このきれいな花をとっていいかな」と言いました。
「いいですとも、私の演奏に合わせて踊ってもらいますかな」

 婆さんは、その花が誰だか承知しているので、藪の中へ潜り込んで花を折ろうとした途端、楽人がバイオリン弾き始めました。そうすると、婆さんは踊り出さずにはいられませんでした。魔の踊りの曲だったのです。速く弾けば弾くほど激しく跳ね上がらなければならなかったので、カラタチは婆さんの着物をボロボロにちぎり取り、トゲが刺さり傷だらけになりました。それでも踊りをやめなかったので、とうとう死んでしまって動かなくなりました。


 ローランドは「父のところへ行って婚礼の支度をしてくるよ」と言い、娘は「その間、ここにいてあなたを待ってる。誰にもわからないように赤い石に化けてるわ」と言いました。

 ローランドは出掛けていき、娘は野原で赤い石になって恋人を待っていました。

 ところが、ローランドは家に着くと、別の女の罠にかかりました。その女は、いつの間にかローランドに娘のことを忘れさせてしまいました。

 娘は長い間そこにいましたが、恋人が全く戻ってこないので、悲しくなり、一輪の花に化けました。誰か来て自分を踏み倒してくれるだろうと考えました。
 けれども当てがはずれ、羊飼いが花を見つけると美しかったので、摘み取って持ち帰り、引出しにしまいました。

 このときから、羊飼いの家では不思議なことが起こりました。朝起きると、仕事が全部終わっているのです。部屋の掃除、テーブルとイスは拭かれ、かまどの火、水が汲んであるといったふうで、昼も家へ帰ると御馳走がのせてあるのです。

 家の中で誰も見かけないし、隠れているはずもないので、見当がつきません。嬉しいのですが、気味が悪くなったので、神通力のある女に相談してみました。
「それは魔法だよ。早起きして、何か部屋で動いているものがあるか気をつけてごらん。もし見えたら、その上に白い布をかぶせなさい。そうすると魔法が解けるのさ」
 羊飼いは、夜が明けるとき、引出しが開き、例の花が出てくるのが見えました。白い布を花の上へかぶせました。その瞬間、美しい娘が目の前に立っていました。

 娘は自分が花だったこと、家の仕事をしていたことを白状しました。

 娘は自分の運命を話しました。羊飼いは娘が気に入ったので、嫁になる気はないかと聞きましたが、娘は断りました。

 恋人ローランドは娘を捨ててしまいましたが、娘のほうは操を立て抜くつもりでいました。嫁になるのは断りましたが、娘はずっと家の仕事をしてあげましょうと約束しました。


 ローランドの婚礼の日が迫りました。

 嫁入り前の娘は、花婿花嫁のお祝いに歌をうたえというおふれが、習わしに従い国中に回りました。

 ローランド一人を思い詰めている娘は、行くのは嫌だと言いましたが、他の娘たちが来て連れて行きました。

 自分が歌う順番になると、自分だけが残ったのでどうすることもできませんでした。
 ところが、娘が歌い出して、それがローランドの耳に入ると、ローランドは躍り上がって「あの声は覚えがある。あれが本当の嫁だ。他のは嫌だ」と叫びました。

 忘れていたことがいきなり心に戻ってきたのです。それで貞操を守り通した娘は、恋人ローランドと婚礼の式を挙げ、悲しみは終わり、喜びが始まりました。

ひとりごと

 娘のひたむきな愛が運命を変えますね。すてられたと思っているのに愛を貫き通す。なかなかできませんね。

 ローランドを罠にかけた女とは誰なのか、触れられていません。死んだ魔女の呪いでしょうか。