ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『夜うぐいすとめくらとかげの話』『うまい商売』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その5

『夜うぐいすとめくらとかげの話』〈KHM6〉

【あらすじ&ひとりごと】

 昔、目玉を一つずつしか持たない「夜うぐいす」と「めくらとかげ」が仲良く暮らしていました。

 ある時、うぐいすは婚礼に呼ばれますが、自分の目が一つしかないことが気になり、とかげに明日返すから一日だけ目を貸してほしいと頼みます。

 とかげは承諾し、自分の目をうぐいすに貸しますが、うぐいすは両側を一度に見られることがうれしくなり、翌日になってもとかげに目を返しません。

 

 そのため、2匹は仲違いし、とかげはうぐいすに、子どもたち、そしてその子どもたち、そのまた子どもたちに仕返しをするから覚えていろと恨みます。

 

 うぐいすは、巣から「ゾーホーホ ゾーホーホ(高いぞ高いぞ)」と鳴き、目は二つあるので、目のない空も飛べないめくらとかげの存在は怖くありません。

 けれども、夜うぐいすが巣をつくる木の下には、決まってめくらとかげの巣があり、卵の中身を空っぽに吸い出してやろうと狙っています。(要約)

 

恩を仇で返すと恨みをかいます。受けた恩は決して忘れてはいけませんね。

 

うまい商売〈KHM7〉

【あらすじ&ひとりごと】

 お百姓が自分の牝牛を七ターレルで売り飛ばしました。

 帰りに池のそばを通り、蛙の「アク、アク、アク(8、8、8)」という鳴き声が聞こえます。

 

 お百姓は「売った代金は七だぞ、八なもんか」と言う。でも蛙たちは「アク、アク、アク」と言うばかりです。

 

 それなら、蛙たちの前で勘定してやろうと、お百姓は七ターレル勘定しました。

 けれども蛙は「アク、アク、アク」と言うばかりです。

 それなら自分で勘定してみろと、お金を池に放り込みます。

 お百姓は蛙が勘定して返してくれるのを待ちますが、蛙たちは「アク、アク、アク」と言うばかりで、お金も返ってこず、日が暮れてきたので帰ることにしました。

 

 それから、お百姓は牝牛を殺して、肉を売れば牝牛2頭分くらいのお金になりそうだと、その肉を持って町へ行くと大きな犬が「ワス、ワス、ワス(少し)」と吠えています。

 この肉が欲しいから吠えているのだと思い、くれてもいいが儲けがなくては困る。その犬の奉公先もよく知ってるから、三日経ったら代金をもらうと言って、お百姓は肉を置いて帰りました。

 

 三日経ち、お百姓は金が入ると楽しみにしていましたが、誰も金を持ってこず、犬の奉公先の肉屋へ行って代金を払ってもらおうとします。

 肉屋はかんかんに怒って、お百姓を店から叩き出しました。

 

 お百姓は訴えるために王様を訪ね、王様とお姫様の前で、蛙と犬どもが、自分のものをとったと、詳しく話しました。

 それを聞いたお姫様がげらげら笑いだし、王様は、お前は正しいとはいえないが、今まで一度も笑ったことがない娘を笑わせたので、礼に私の娘をお前にやる、と言います。

 

 ところがお百姓は、お姫様などいらない。自分にはかかぁが一人いる。ただでさえそれでいっぱいだと答える。

 王様は礼儀知らずと腹を立て、別の褒美を五百だけつかわすから、三日経ったら来るようにと言いました。

 

 お百姓が城から出てると、番兵に褒美を五百もらったと言います。

 すると番兵が分けてくれと言うので、二百くれてやるから三日経ったら、王様のところへ行くようにと話します。

 そして、そこにはユダヤ人も近くにいて、ターレルの銀貨ではしょうがないと、両替をして小銭に取り替えてあげましょうと言う。

 するとお百姓は、お前には三百やるから今すぐ小銭でくれと。三日経ったら、王様のところでもらえるからと話します。ユダヤ人はグロッシェン通貨を3つ渡しました。

 

 三日経って王様のところに行くと、王様は五百をつかわすと言います。

 お百姓は、その五百ならもう自分の分ではない。二百は番兵に分け、三百はユダヤ人が両替してくれたと話します。

 やりとりするうちに、その番兵とユダヤ人が入ってきて、自分たちの分け前をくれと言いました。

 すると、その数だけ殴られ、番兵は慣れていたのでじっとしていましたが、ユダヤ人のほうは、これが約束のターレルの銀貨かと、ひーひーわめきました。

 

 王様はお百姓のしたことがおかしくなって、今までの腹立たしさもなくなり、お百姓に褒美をもらいもしないうちになくしてしまったから、埋め合わせをしてやろうと、城の蔵へ入って、欲しいだけ金を持ち出すがよいと話します。

 

 お百姓はすぐに行って、ポケットの中に入るはだけ金を詰め込み、料理屋へ行って、勘定を始めました。

 そして、王様の文句をブツブツ言いました。この言葉を後からつけてきたユダヤ人が王様に言いつけます。

 王様は怒り出して、ユダヤ人にお百姓を連れてこさせます。

 

 お百姓は行くことにしますが、金をたくさん持っている自分がこんな古い着物を着てはいけないと言い出します。

 そこでユダヤ人は、自分のきれいな着物を貸しました。

 

 王様のところに行くと、王様はユダヤ人から悪口を聞いたとお百姓を叱りました。

 そこでお百姓は、ユダヤ人の言うことは嘘です。自分が着物も借りて着ているとありもしないことを言うと話しました。

 すると、ユダヤ人は、王様の前に出られるよう、貸してやったものではないかと言う。それを聞いた王様は、自分か百姓か、どちらかをユダヤ人が騙したに違いないと言い、ユダヤ人を殴らせました。

 

 お百姓は良い着物を着て、お金をたくさん持ってうちへ帰りました。

 今度こそ、うまくやったとお百姓が言いました。

 

 これは少し翻訳が分かりづらい作品でしたね。

 でも喜劇で楽しむことはできました。

 要領よく人を出し抜いて得をする、欲張りが損をする。なかなか賛成できることではありません。

 誠実に生きていきましょう。

 

 グリムには、ユダヤ人が損な役回りがいくつかあります。これもとても気の毒ですね。

岩波文庫(1979)