『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その50
『人ごろし城』
あらすじ(要約)
昔、娘を三人持つ靴屋がいました。
あるとき、靴屋が留守にしていた間にどこかのお殿様がやってきました。素晴らしい馬車に乗っていて、皆大金持ちなのだろうと思いました。
お殿様は美しい娘たちの一人を嫁に欲しくなりました。その娘はお金持ちの殿様と一緒になれば、幸せになれると考えました。ですから、苦情も言わず、お殿様に連れられ馬車に乗りました。
途中で日が暮れました。
やっとお城に着きました。何もかも美しいものばかりでした。
翌日、お殿様は娘に四、五日留守にするが、鍵を置いていくからどこでも見学すればいい、宝物はおまえが勝手にしていいと言いました。
お殿様が旅に出ると、娘はうちじゅうを歩きまわりました。目に映るものは結構なものばかりで、いい気持ちになりましたが、最後に地下室へ行ってみると、婆さんが一人座って人間のはらわたをこそげ落していました。
「お婆さん、何しているの」
「はらわたをこそげてるのさ。明日は嬢ちゃんのだよ」
それを聞くと、娘は驚き、持っていた鍵を血の入ったタライの中へ落としました。血は鍵にくっついて水で洗ってもとれません。
「これでは、嬢ちゃんは死ぬことに決まったね」と婆さんが言いました。「この部屋は殿様とばばあのほかは、誰も入れないのさ。嬢ちゃんが入ったことは殿様にわかるからね」
ちょうどこのとき、乾草を積んだ荷車が城から出ていくところだったので、婆さんが生きていたければあの中へ隠れて逃げ出すよう教えてくれました。娘はそのとおりにしました。
お殿様が帰ってきて、お嬢さんはどこにいるとたずねました。
「あの娘もどうせ明日やってしまうのですから、もうやっつけちまいましたよ。これが髪の毛、心臓、血もまだあたたかい。あとは犬がみんな食べてしまいました」
娘は死んだと思って、お殿様は安心しました。
娘は乾草の荷車に乗って、近所の大きな城へ行きました。娘は草の中から出て、身の上話をしましたら、少しの間おいてもらえることになりました。
しばらくたって、この城の殿様が、近くに住む身分のいい方々を招いて、宴会を催しました。これには人殺しの城の殿様も呼ばれていましたから、お嬢さんがわからないよう顔と衣装に細工しました。
客がそろうとそれぞれお話をさせられることになりました。やがて順番が回ってきたので、お嬢さんはこの話をしました。そうすると、例のお殿様は逃げ出そうとしました。けれども、牢屋に入れられ、城は取り壊され、財産はお嬢さんのものになりました。
その後、お嬢さんは自分を親切に匿ってくれたこの屋敷の若殿のお嫁さんになって長生きをしました。
ひとりごと
『青ひげ』と同様、この物語も童話集から削除されています。
主が殺人鬼で外出の間、娘(妻)に部屋の鍵を渡すなど、『まっしろ白鳥』『青ひげ』と共通点が多いですね。そして血だまりに鍵を落とし、洗っても血が落ちないところも。
気になるのが、父親が不在のときに嫁入り。お金に目が眩んだのか。そして助けてくれたお婆さんのその後。
どうでもいいことが気になりますね。
