【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、坂本湾さんの文藝賞受賞作『BOXBOXBOXBOX』(2025)
読後にじわじわと不気味さが広がる、印象的な作品ですね。
タモリさんの「世にも奇妙な物語」のような日常の裏側が崩れる感覚があります。
薄霧の立ち込める宅配所でベルトコンベアに流れてくる箱を仕分ける単調な仕事に従事している主人公・安(あん)。
作業員たちは、他と関わりを持たず、ただ機械のように箱を処理し続けるが、安(あん)は退屈を紛らわせるため、箱の中身を想像するようになる。
やがて、安(あん)の中に中身を確かめたいという欲望が芽生える。そしてある日、ベルトコンベアに流れてきた吐瀉物でまみれ崩れた箱を梱包し直すことになり、決して開けてはならない箱の中身をみることができた。
その瞬間を境に、安の中に異変が起きはじめ、流れていたはずの箱が消えていく。
物語は、安を含む複数の作業員の視点を行き来しながら進んでいきます。
読んでいて、「怖い」というより「居心地が悪い」感じでしたね。この小説の核は、箱の中身でも怪異でもなくて、何も感じなくなっていく労働の感覚にあると思います。
タイトルのBOX ✕ 4。箱だらけ。何度も箱が流れてきて終わらないのを象徴しているのでしょうね。
長時間続く単純作業の中で「無想」「妄想」「曖昧模糊」をリアルに感じ、「箱を開けた」ことより、開けたくなるまで追いつめられていく過程が強烈です。
それは、箱の中身への好奇心ではなく、退屈、孤独、無意味さからの積み重ねなのでしょうね。だからこそ、単なる奇妙な話ではなく、現代の労働環境そのものを映し出しているのかなと思います。
薄霧が立ち込める作業所が舞台。同時に読者の私の頭の中も霧が立ち込めるような。「何だったんだろ、今の・・・」という不安定な感覚。
ライン作業場って、霧というか煙が漂い、周囲の作業員がよく見えない所ってあるのかな。冷凍庫なら考えられますけど。
読後、その感覚がしばらく頭から離れませんね。
