ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『三まいの蛇の葉』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その12

『三まいの蛇の葉』〈KHM16〉

 

【あらすじ(要約)】

 あるところに、貧しい男がいましたが、貧乏がひどくなり、ひとり息子を養えなくなりました。息子は、これ以上父親の重荷になるのがつらくなり家を出ます。

 このとき、国は戦争中で、息子は戦争で手柄をあげ、王様は宝物を授けました。

 

 王様にはひとり娘がいて、とても美しい方でしたが、相当な変わり者でした。

 自分が死んだとき一緒に、生きながら埋葬されてもいいと約束できる人でなければ、結婚しないというのです。

 逆に相手が先に死んだら、自分も一緒に埋葬されると言います。

 

 男は、お姫様の美貌にまいっていたので、王様に結婚を願い出ます。

 王様は、娘が先に死ぬと、一緒に埋められてもいいのかと念押しますが、男は自分の愛情はとても深く、どんな危険も厭わないと言いました。

 

 結婚した2人は、しばらく幸せに暮らしますが、お姫様は病気にかかり死んでしまいました。

 若い王様は、自分がした約束を思い出し、墓に一緒に入るのが怖くなります。

 しかし、見張りがいて逃げることができません。

 

 いよいよ姫の亡骸が墓に納められる日が来ました。

 姫の棺桶を納めた墓(部屋)には、ろうそくが4本、パンが4つ、ワインが4本あります。

 この食料がなくなれば、若い王様は餓え死にします。悲しみに沈みながら、少しずつパンとワインを消費していきました。

 

 そこに、天井の隅から一匹の蛇が出てきて、亡骸に近づきました。若い王様は剣を抜き、蛇を3つにたたき切りました。

 しばらくしてべつの蛇がまた出てきましたが、先に切られて死んで転がっているのを見ると、そのまま後戻りし、今度は、3枚の葉をくわえて現れました。

 蛇は、切られた蛇の体に葉を置きました。すると切られた蛇の体がたちまち一つになり、2匹そろって逃げていきました。

 葉っぱは下に落ちたままです。

 この様子を見ていた若い王様は、葉を拾って、死んだお姫様の両目と口に置いてみました。

 すると、お姫様の青ざめた顔が赤みをおび、息をして目を開けました。驚くお姫様にこれまでのことを話し、残っていたワインを飲ませパンをあげると、お姫様は元気になり体を起こしました。

 ニ人は無事にお墓から出ることができました。

 

 若い王様は、蛇の3枚の葉を家来に渡し、大切にしまっておくよう言いました。

 

 お姫様は生き返ってから夫への愛情がなくなってしまったようでした。

 

 少したってから若い王様は、妻と一緒に年老いた父親に会いに行くため船に乗りました。

 お姫様は、夫が自分への約束を守り、生き返らせてくれたのを忘れ、船長を好きになります。

 そして、若い王様が眠っているとき、お姫様は船長を呼び、2人で若い王様を海に放り投げました。

 お姫様は船長に、若い王は途中で死んだことにして、自分と結婚して、王の後継者になれるようにすると言いました。

 

 しかし、若い王様の家来がすべてを見ていましたので、見つからないよう小舟をおろし、若い王様の遺体を探し出し、例の3枚の葉を、両目と口に乗せ、生き返らせました。

 

 若い王様と家臣は一生懸命小舟を漕いで、お姫様たちより先に国に戻り、王様に起きたことを伝えます。

 王様は、信じられないと言いますが、若い王様と家来を部屋に隠しました。

 

 それから間もなく、お姫様が戻ってきます。

 王様は姫になぜ一人で戻ってきたと問うと、夫が航海中病気で死に、船長が手を貸してくれなければ、悲しくてここには戻ってこれなかったと言いました。

 すると王様は、部屋を開け、若い王様と家来に出てくるよう命じました。

 夫を見たお姫様は雷に打たれたようになり、膝をついて詫びました。

 

 しかし、王様は許すことはできないと言います。夫は、おまえと一緒に死ぬ覚悟をして、生き返らせもした。それなのに、おまえは夫が寝ている間に殺したではないかと。

自分のしたことの報いを受けなければならないと話し、お姫様は、船長と一緒に穴だらけの舟で海に突き出され、二人は波間に沈んでいきました。

 

【ひとりごと】

 グリム童話では、人に助けられてお金や地位を手に入れる主人公が多いですが、この童話は自分の力で未来を切り拓きましたね。

 この童話からは、安易に約束をすることの恐ろしさと、約束を果たすことの大切さを訴えているのでしょうか。恩を仇で返してはいけないという教訓を学ばされます。

 でも、どんなに悪事をはたらいても、実の子を自ら極刑にできるのかな。これがこの童話集の残酷なところでしょうね。

岩波文庫(1979)