ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『なぞなぞ』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その18

『なぞなぞ』〈KHM22〉

【あらすじ(要約)】

 昔、ある国の王子が世界を見て回りたいと、家来を一人だけ連れ出発しました。

 ある日、森へ入り日が暮れ、宿を探していると若くてきれいな娘が小さな家へ歩いていくのが見えます。

 王子は「今夜、泊めてもらえるだろうか」と話しかけます。

 娘は「泊まれないことはないが、お勧めしない」と言いました。

 王子がたずねると、娘は「母親が悪い術を使い、客を大切にしない」と言います。

 王子は、魔女の家だとわかりましたが、夜もふけ、先へ行くことができず、怖くなかったので家に入っていきました。

 

 婆さんは、椅子に座って知らない客人を赤い目でじろりと眺めます。

 婆さんは親切な様子を見せ、王子と家来に料理を勧めますが、娘から「何も食べたり飲んだりしないように」と忠告されました。

 王子と家来は朝まで眠り、翌朝、王子が馬に乗って発ちました。遅れた家来が馬具を締めていたところに婆さんが飲み物を持ってきました。

 ところがそのとき、コップが破裂し毒が馬にかかると、馬はすぐさま倒れて死んでしまいました。

 家来は王子の後を追って、この出来事を話してから、馬具を捨てるのも惜しいと思い取りに引き返したところ、すでにカラスが死んだ馬を食べていました。家来はカラスを殺し、お土産にしました。

 

 それから二人は、一日中森を歩きますが外に出られませんでした。日が暮れたころ宿屋を見つけ入り込みました。家来は持ってきたカラスを宿の主人に渡し、夕食を作るよう頼みました。

 ところが、二人は人殺しの巣へはまりこみ、出てきたのは十二人の悪者どもで、客を殺して持ち物を奪い取ろうとしました。

 けれども、悪人どもは仕事の前に食卓につき、宿の主人と例の魔女も加わり、スープを食べましたが、そこにはさっきのカラスの肉が刻みこんであったのです。その肉を飲み込んだかと思うと、皆倒れて死んでしまいました。カラスに馬肉の毒が伝わっていたからです。

 生き残ったのは宿の主人の正直な娘だけで、悪いことには関わり合いませんでした。娘は王子に人殺したちが残した宝を見せたところ、王子は「おまえが持っていなさい、私は何もいらない」と言って、家来と旅立ちました。

 

 それから長い間歩き回り、二人はある都へ入りました。そこには、美しいが自分一人が偉いと思い上がっている王女がいて、この王女に解けないなぞなぞを出す者がいたら、婿にしてやろう、そのかわりなぞなぞが解けたら、なぞなぞを出した男は首を切られるというおふれがありました。

 王女は、なぞなぞを三日間考えることになっていましたが、とても利口な人で期限前に解いてしまいます。

 もう九人まで命を落としたところへ王子が来合せて、王女の美しさに目がくらみ、自分の命を賭けてもいいと思いました。

 

 王子は「一人も殺していないのに、十二人殺したものはなあに?」と王女になぞなぞをかけました。

 王女は考えますが答えがわかりません。なぞなぞの本を調べても書いてありません。困った王女は、召使いを王子の寝室に忍び込ませ、王子が夢を見て何か口にしたことを聞き取るよう言いつけます。寝言で答えを明かすかもしれないと考えたのです。

 しかし、家来も利口で、王子の代わりに寝室で寝て、召使いがそばへ来ると着ていた外套をもぎとり、小枝のムチで叩き出しました。

 

 次の晩は、王女はおこしもとをつかわしますが、やはり家来に外套を奪われムチで叩き出されました。

 

 三晩目は大丈夫だろうと王子は、自分の寝床に入ると、今度は王女自身がやってきました。

 薄鼠色の外套を着た王女は、寝ている王子のそばに座り、眠っているものと思って話しかけますが、王子は目を覚ましていて王女の言うことを聞いていたのです。

王女は「一人も殺さなかったというのは、なあに?」とたずねます。

王子は「毒で死んだ馬を食べて、死んだカラスのこと」と答えます。

王女は「それなのに十二人殺したというのは、なあに?」とその先をたずねます。

王子は「カラスを食べて、その毒で死んだ十二人の悪者のこと」と。

 なぞなぞが解けると王女は帰ろうとしますが、王子が外套を掴んでいたので、王女は嫌でも外套を置き去りにすることになりました。

 

 翌朝、王女は十二人の裁判官を呼び出し、なぞなぞの答えを聞かせました。そこに、そのなぞなぞを出した若い男が申し分を聞いてほしいと願い出ます。

「王女は、昨夜私の部屋に忍び込み、答えをおたずねになった。さもなければ、解けなかったはずだ」と言いました。

 裁判官たちが「証拠を出せ」と言うと、王子の家来が三着の外套を持ってきました。王女が普段着ている薄鼠色のを見て裁判官たちは「この外套に金と銀で刺繍をするように。そうすればそのまま婚礼のドレスになるでしょう」と言いました。

 

【ひとりごと】

 王子たちが巻き込まれたトラブルの原因は、そもそも魔女の家に泊まったことですね。娘の忠告を聞かずに。

 でも、結果的には死なずに、さらに「なぞなぞ」を仕入れることもでき、美しい王女様を手に入れましたが。

 

 この王女様はなぞなぞ勝負で9人もの命を奪っています。結婚しないという選択肢は与えられなかったのでしょうけど、王子はそんな王女と幸せになれるのかと思ったりもします。

 どんなに美しくても一緒に居るのは怖いですね。外見ではなく、やはり同じ価値観を持ち、気持ちのきれいな人と一緒にいるのがいいですね。どうせ命を賭けるなら。

岩波文庫(1979)