ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】『僕の神さま』芦沢 央 著

角川書店(2020)



 

【あらすじ&ひとりごと】

 

 本作品の帯にある『あなたは後悔するかもしれない。第一話で読むのをやめればよかった、と』という一文。

 芦沢央さんの作品『火のないところに煙は』を思い出し、またどんなホラーなのかと、躊躇わずに手に取りました。

 

 小学生の主人公・佐土原くんの視点から物語がすすむ4遍からなる連作集です。

 小学生の優しさから起きる日常生活での些細なことから、残酷でとても切ない出来事まで、主人公の友人・水谷くんが小学生らしからぬ洞察力、推理力で解決へと導くストーリーです。

 

 読み進める中でなんともモヤっとする複雑な感覚と不穏な気配に、主人公たちが小学生だということを忘れそうになります。

 

 第一話の主人公とその祖父との出来事は、主人公の優しさから招いた、心がキュンとするストーリーでした。

 このストーリーの要として登場する桜の花とアーモンドの花。とても似ているんですよね。

 私も以前、事務室の窓越しにアーモンドが植えられていて、桜の開花よりも少し早く咲いて、アーモンドの実がつき始めるのを見て素敵だなあと思ったことがあります。

 

 このあともそんな短編集が続くのだろうと思っていたら、見事に予想を裏切られ、なかなか面白かったです。


 どの短編も一貫して小学生の主人公「僕」の視点で物語がすすむため、語り口がとても穏やかで、とても読みやすい。


 そして、一話から最終話まで主人公の印象が、少しずつ変化しているように感じます。

 ストーリーのほかに子供が心を変化させる巧みな人物描写も楽しむことができました。