【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、清水晴木さんの小説『分岐駅まほろし』(2022)
分岐駅まほろしは、人生の「もしも」に心を残した人々が迷い込む不思議な駅を舞台にした五話からなる物語です。
①もしもあの時、告白をしていたら
②もしもあの時、第一志望の大学に合格していたら
③もしもあの時、夢を追わなければ
④もしもあの時、病院に連れて行っていたら
⑤もしも、あの時ーー
主人公は、ある後悔を抱えながら日々を過ごしていた。
そんなある日、ふとしたことがきっかけで辿り着いたのが「分岐駅」。
そこは、過去の選択とは別の道をたどった”もうひとつの人生”に触れることができる場所で、後悔を抱えた主人公を待ち受ける”月替わりの駅員”さんが分岐点の過去までエスコートする。
駅を訪れる人々はそれぞれ、やり直した過去や、選ばなかった未来への想いを胸にしている。そしてその選択が分岐する先を訪れ過去を見つめ、その経験が現実の人生に意味をもたらしていく。
物語は、「選ばなかった人生」と向き合う人間の心を丁寧に描いていきます。
誰もが「あのとき違う選択をしていたら」と一度は考えたことがあるはずですよね。
読み終えたあと、胸の奥を撫でられるような感覚が残りました。
本作は、その普遍的な後悔や未練を優しくすくい上げ、それでも今を生きる意味を問いかけてきますね。
過去に戻ってやり直しができるわけではないので、単なる「やり直し」の救済として描かれていない点が、なお心に響きます。だからこそ、今の自分の人生も決して間違いではなかったのだと、背中を押してくれるように感じます。
静かに淡々と展開していき、ひとつひとつのエピソードが心に沁みて、読後にじんわりと温かさが広がります。日常の中で立ち止まり、自分の歩んできた道を見つめ直すきっかけになりそうな一冊。
ある三つの条件が重なったときに訪れることができる「分岐駅まほろし」。そんなところがあるといいですね。「まほろし」って、幻(まぼろし)の都市、どこにも存在しないという場所のことなんですね。知りませんでした。
そして、読みながら、この駅員さんの存在も気になっていたのですが、思えば同じように『さよならの向う側』でも”案内人”が登場します。
そんなことを思いながら、いったいどんな人が駅員さんを担っているのだろうか、と先を進めていると、結末に明かされる正体にまたじんわりときます。おもしろかったです。
