【あらすじ&ひとりごと】
今回は伊岡瞬さんの『不審者』
平穏な家庭に突如現れた「不審者」によって、日常が崩壊していく様子を描いたサスペンス・ミステリです。
平穏な日常が一変する恐怖と、それに立ち向かう家族。結末はどうなるのか、不審者をどう排除するのか。ハラハラでした。
主人公・折尾里佳子、心配性で小心のため高校生のときにつけられたニックネームが「リトル」。会社員の夫・秀嗣と5歳の息子・洸太、義母・治子と暮らしながら、在宅でフリーの校閲者として働いている。
ある日、秀嗣がサプライスで客を招くが、それは両親の離婚によって20年以上音信不通だった兄・優平だった。
クラウドファンディングの会社を立ち上げたという優平に対し、治子は「優平はこんな顔じゃない」と本当の息子なのか疑念を抱く。
里佳子もまた、優平の言動に不信感を募らせるが、秀嗣の兄であることで居候させることに。
それ以降、里佳子の周囲に不可解な出来事が多発し、平穏だった家族関係が徐々に崩れていく。
序章から里佳子夫婦の子がベビーベッドでうつ伏せに息をしていないという不穏なスタート。早々から読者をひきつけますね。
家庭という身近で安心できる場所が、外部からの侵入者によって、徐々に崩壊していく過程を登場人物の心理描写でリアルに描かれ、日常の中に潜む不安や違和感を緊張感とともに読者に突き付けてきます。
いったいどうやって里佳子たちは、不審者から家庭を守るのか。そんな思いを持ちながら読み進めていった先に、まんまと足元をすくわれてしまいましたね。180度違った結末が待っていたとは。
いかにも怪しい雰囲気を出して、不審者に対する観念を固定させて、一気に読者の予想を裏切る展開。おもしろかったです。
私のように簡単に騙されてしまった読者はいるのかな。顛末が気になる方はぜひ手に取ってご確認ください。
