【あらすじ&ひとりごと】
主人公・青砥健将は50歳。
父親が亡くなったことを機に、老いた母親を看るため地元に戻るが、妻子とも別れ、実家で一人暮らし。
そんな中、検査で訪れた病院の売店で働く、中学の同級生・須藤葉子と再会し、2人の交流が始まる。
大人の恋愛小説です。
物語は、須藤の訃報を耳にするところから始まります。
青砥の献身的な優しさ、須藤の発するひとつひとつのことばが深くて胸に響きます。
青砥の覚悟を須藤は理解しつつも、青砥へ心を委ねる資格がないと自分を責める気持ちが悲しく伝わります。
人それぞれ愛情の表し方は違いますが、二人の恋愛に後悔はなかったのか。
青砥の心に残ったおもりは、いつしか軽くなっていくのか。
そんなことを考えてしまいます。
須藤の「ちょうどよくしあわせなんだ」ということばに、自身に与えられることができる幸せの大きさが感じられ、胸が痛くなりました。
思いやりを与え合う二人の短い時間が心に沁みて、余韻が残る作品です。