【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、松下龍之介さんの『一次元の挿し木』(2025)
「このミス!」大賞の文庫グランプリ受賞作です。テレビドラマ化もされているようですね。謎にけん引されていくストーリーのおもしろさにはページをめくる手が止まりませんでした。
物語は、ヒマラヤ山中の標高五千メートルに抱かれた氷河湖・ループランド湖、ここで発掘された200年前の人骨から始まる。
大学院で遺伝人類学を学ぶ七瀬 悠(ななせ はるか)がDNA鑑定を行うと、4年前に失踪した妹・紫陽(しはる)のものと完全に一致する。
不可解な結果を担当教授・石見崎に相談しようと自宅を訪れたところ、何者かに石見崎は殺害され、古人骨も研究室から盗まれてしまう。
紫陽の失踪とDNAの謎を追う悠は、やがて遺伝子やクローンに関わる大きな企みに巻きこまれていく。
とにかくストーリー展開がおもしろかったですね。
「200年前の人骨と4年前に失踪した妹のDNAが一致する」という設定からはじまり、読み進めるほどに新たな謎が現れ、誰が正しいのかわからなくなります。
現実なのか、虚構なのか、妄想なのか。中盤あたりからは、迷宮に入り込んだような感覚になり、転げ落ちるようにページが進みました。
ただ少し、後半の展開が都合よく進みすぎるようにも感じました。謎がつながり、収まるところに収まっていく。大きな事件になりながらも何事もなく収束してしまう。その爽快感も魅力だけど、ここまでうまくいってしまうかな、と思うところもありますね。
そしてラスト。ずっと探し続けてきた妹と再会するも再び目の前から消えてしまう。ようやく手にしたものが消えていくにもかかわらず、妙に清々しい。長い間、抱えていた自分の影から解放されたのかもしれませんが。喪失感や苦さは残らなかったのか。
遺伝子やクローンという題材を使いながら、最後まで読者を引き付けていくおもしろさは見事でしたね。
「このミス!」というより、ミステリーホラーを読んでいるような怖さも感じた一冊。
謎に引き込まれ、一気に加速する。読後にはおもしろさとともに、ラストへのちょっとした違和感も残りました。
