【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、小野寺史宜さんの『いえ』
下町荒川を舞台にした『ひと』『まち』に続くシリーズ3作目。
「家族」「兄妹」「友人」「居場所」という身近なテーマを丁寧に描く物語です。
社会人3年目の三上 傑(みかみ すぐる・25歳)は、スーパー勤務。両親と大学生で就活中の妹・若緒(わかお・22歳)との4人暮らし。
若緒は、傑の友人・城山大河と交際しており、ドライブデート中に大河が事故を起こし、助手席にいた若緒が左足を引きずる後遺症を負う。
以来、家族、友人の関係がズレはじめ、傑もまた兄・友人・家族として、どうあるべきか困惑する。
そんな混ざり合いの中、傑は心が揺れながらも「家・家族・居場所」のあり方を問い直していく。
派手な事件が起こるわけではなく、「妹の事故」という出来事を通じて、生活の中での”普通”や”当たり前”が壊れはじめ、それまであまり意識しなかった「家」という存在の大切さを改めて認識していきます。
小野寺さんの『ひと』『まち』『いえ』は、「人・地域・家族」という繋がりをテーマにした三部作です。
「人と人との出会い」
「地域の支え合い」
「最も近い家族という関係」を描いています。
どの作品も派手さはないけれど、日常の中の優しさや再生を静かに描いています。
登場人物の言葉や行動の中に、確かな「優しさ」や「再生」が息づいていますね。
読み終えたあと、身近で見知った誰かの顔を思い浮かべたくなるような、そんな静かな温もりが残る物語でした。
