【あらすじ&ひとりごと】
読み心地がとてもさわやかな小説でした。
私が犬好きもあってか手にした一冊ですが、人と犬との共生を描くありがちな内容ではなく、18歳の高校生たちの決意や友情、恋愛、そして新たな出発を犬が静かに優しく見守っていくという美しい一冊でした。
高校に迷い込んだ「シロ」と呼ばれていた子犬は、生徒の努力で学校で飼うことを許され、ちょっとしたできごとから名前を「コーシロー」と名付けられる。
高校で拾われ、育てられるコーシローをめぐって、昭和から平成、令和の春から春へと季節がめぐり、コーシローが見守り続けた18歳たちの思いを描いた作品です。
本作品は連作短編で、どの編も始まりはコーシローの視点から描かれます。
ユーモアがあってほっこりするも、卒業していった最初に出会った少女の「桜」の匂いと面影を胸に秘め続けるコーシローに胸が熱くなります。
でも決して悲しい物語ではなく、18歳が逡巡しながらも決意する瑞々しい作品ですので、むしろ大人たちに読んでもらって、若者の思いを感じてほしいなあと思います。
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