【あらすじ&ひとりごと】
今回は伊岡瞬さんの『仮面』。
何の後ろ盾もない無名の人間が、過去や自身を消す仮面をかぶり手を染めながら、頂点へと近づいたとき、些細なことからその仮面にヒビが入って、一気に崩壊していくミステリ。
作家・評論家としてテレビで活躍するほどになった三条公彦。そして、その助手である久保川克典。二人は米留学後、事務所を構え、明日の生活もままならない中で、成功のためには手段は選ばず、ここまでのぼり詰めてきた。
そんなとき、パン店経営・宮崎璃名子の白骨遺体が発見され、さらに主婦・新田文菜が行方不明という事件が発生する。
捜査にあたる刑事・小野田と宮下は、この二人が繋がっていたことに気付く。
そして、二人の過去に三条もまた関わっていたことが明らかになっていく。
章立てが、登場人物名になっていて、その者の視点で語られ、過去や現在、事件の事実関係が徐々に暴かれていき、最後に繋がっていくのでテンポよくストーリーが進みます。
きれいごとだけでは生き残れない業界、そこにのし上がっていこうと群がる野心家たち。
仮面をかぶり、それが普通に自身の顔のように生きていても、作り物はいつか簡単に崩壊し真実の姿が晒されます。
400頁を超える長編ですが、先を急かされるクライムサスペンスでした。