【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、織守きょうやさんの小説『彼女はそこにいる』(2023)
ホラーとミステリの境界にあるような余韻。怖さだけじゃない、人の心に残る”執着”と、人がいるのに心だけがいないという”不在”を感じる物語ですね。
短期間で入退去を繰り返す一軒家にかかる連作小説です。怪奇現象が起こり、住人がすぐに退去してしまう物件をめぐって、三つの視点で描かれるストーリーです。
〇第1話「あの子はついてない」
母と中学生の姉妹が越してきた家で不可解な出来事が起こる。家族の誰でもない長い髪の毛が落ちていたり、テレビが勝手に点いたり消えたり、見知らぬ不気味な男性の姿が庭に、、、。恐怖体験が重なり、退去へと追い込まれる少女の視点で描かれます。
〇第二話「その家には何もない」
母と中学生姉妹の退去後、担当する不動産会社の担当者とフリーライターが、その曰く物件の謎を調べはじめる。怪奇現象から科学的に解明できそうな事実として展開していき、怪談からミステリへと物語が転換しはじめます。
〇第三話「そこにはいない」
これまでの入居者が短期間で退去するという事件の真相が徐々に明かされていく。登場人物の過去の事情が明かされることで、怪奇から人間の根底にある「怖さ」が現れる結末へと向かいます。
ホラーなのか、ミステリなのか。「幽霊のいる家」の話かと思いきや、だだの幽霊話ではありません。
怪奇現象が描かれつつも、人間の心理が怖さの本質に迫る構造で、三つの視点が交差することで、印象がひっくり返り、物語は単純な怪談ではなく、群像劇的になり読者を引き込み揺さぶります。
そして、単純な怖さではなく、ホラーなのに人間が怖い、人の執着が恐怖とともに残る感覚があります。
外側にある怪異だけではなく、内側に潜む感情の揺れや執着こそが本当の怖さなのかもしれませんね。
最後に見えてくる「怖さの正体」とは。
読後、「そこにいる」のは本当に彼女だったのか。
それとも私たち自身の心にある何かだったのか。そんなことを考えさせられる静かで強い一冊。
ホラーともミステリとも言い切れないこの余韻を味わってほしいです。
ジャンルを超えた読み味でした。
