【あらすじ&ひとりごと】
今回は、荒木あかねさんのデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作『此の世の果ての殺人』
終末世界を舞台にしたミステリーです。
直径7.7キロメートルを超える小惑星・通称「テロス」が、熊本県の阿蘇に衝突することが確定し、67日後には、地球は壊滅する状況に突入した。
人々は国外逃亡、自殺、混乱状況へと巻き込まれ、日常が崩壊する中、主人公・ハル(小春)は「夢を叶えたい」と福岡県の太宰府自動車学校に通っていた。
年末、教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。
ハルは、教官で元刑事のイサガワ先生とともに、地球最後の崩壊寸前の社会での謎解きを始めていくと、そこには少年たちのいじめ問題が含む連続殺人へと発展していく。
そして、ハルとイサガワを中心に調べていく中、知り合った仲間と行動をともにし、真相に迫っていく。
小説で終末世界という極限状態ものは、よくある設定ですけど、教官の元刑事・イサガワ先生の「正義の暴走」は、何とも読み手を引き込んでいきますね。
そして、そこに冷静なハルとのやり取りのバランスがまた楽しい。
無法地帯と化した状況下でも、「善と悪」「正義と不義」は必ずあって、人を裁くとはどういうことか、というテーマをさらりと問いかけてきますね。
荒木さんの出身の福岡県が舞台ですが、私にとっても懐かしいですね。
ストーリーの一端が自動車教習だけあって、太宰府天満宮や田川、飯塚の地名や道路名が出てくるなど、元々私は福岡が出なので、さらに引き込まれていきます。
生と死の狭間でも正義と信念を貫くイサガワ先生と、内向的でありながら芯の強さをもつハルとのバランスが、極限状態を忘れさせる小気味良さを感じさせてくれます。
一方で、終末ものに徹底したリアリティ感や絶望感に物足りなさを感じるかもしれませんが、すべてが解決し、あと数時間で眩い火球となって地球を壊滅させる小惑星「テロス」を眺め、美しいと語り、ハルとイサガワ先生のおしゃべりは続く、そしてハルの叶えたかった夢が明かされる。とても爽やかなラストでした。
荒木さんは、最年少の乱歩賞受賞者だそうで。次作も出ているので、また期待して読んでみましょう。
