【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、野宮 有さんの江戸川乱歩賞受賞作『殺し屋の営業術』(2025)
選考では、審査員全員から高い評価を受け、他作品を寄せ付けない圧倒的な支持を集めたという話題作。
ユーモラスな設定とは裏腹に、物語は次第にダークさを増し、敵と味方との境界さえも曖昧になっていく、最後まで先が読めないエンタメ・ミステリです。
主人公・鳥井一樹は、契約を勝ち取るためなら手段を選ばないトップ営業マン。
ある日、商談先を訪れた際、そこにいたのは全身を切り刻まれた男の死体とともに、その家人を“仕事”として殺しに来たプロの殺し屋だった。
偶然にも事件の目撃者となってしまった鳥井は命を狙われるが、持ち前の営業力と交渉術を武器に絶体絶命の状況を切り抜ける。
鳥井は、殺し屋の世界で「営業」という武器で裏社会を生き抜くことになり、相手の心理を読み、駆け引きをし、信頼を勝ち取る。その営業のテクニックが、そのまま命懸けのサバイバルへと変わっていく。
タイトルからはコミカルなミステリを想像していたけど、その印象はすぐに覆されます。
営業マンならではの話術や交渉術には思わず笑ってしまう場面もありますが、それ以上に命を懸けた心理戦がドキドキです。
敵との駆け引きや知恵比べが続き、どうやって切り抜けるのか、とページをめくる手が止まらないです。
営業という技術が、裏社会で生き残るための武器になるという発想も奇抜な設定で違和感がないとは言えないけど、最後の最後まで楽しませてくれます。
ユーモアだけでも、ハードボイルドだけでもない、そして緊張感と娯楽性のバランスが絶妙で、「営業」というテーマをここまでスリリングなミステリへと昇華させたおもしろい作品でしたね。
