ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】『ライフ』小野寺史宜 著

ポプラ社(2019)

【あらすじ&ひとりごと】

 小野寺史宜さんの作品は、『ひと』を読んでとてもよかったので、今回は『ライフ』を読んでみました。

 タイトルから想像できるように、主人公のゆったりと流れていく日々の生活が描かれた物語で、とても現実的な空気感を楽しんで読むことができました。

 

 主人公・井川幹太27歳。大手製パン会社を辞め、今はアルバイトを掛け持ちしながらの気楽なアパートひとり暮らし。

 物語は、結婚披露宴の代理出席のアルバイト中、そこに出席する高校時代の同級生と再会するところから始まる。

 

 そして、気楽なアパート暮らしのはずが、2階へ越してきた「戸田さん」との出会いと望まない付き合いが始まるなど、人との触れ合いを通して少しずつ幹太の気持ちに変化が表れていく。

 

 世間一般では、自分を卑下したり焦ったりしそうだけど、毎日淡々と穏やかに生活する幹太の性格がよい。

 登場する人たちもいい人ばかりで、実際にはそんな人ばかりではないが、やさしい物語に心が落ち着きます。

 

 昔は「向こう三軒両隣」なんて言葉をよく聞いたけど、近所との関わりが希薄となった今はあまり聞かなくなりましたね。

 煩わしいとは思うけど、私の子どもの頃は隣りのおじさんやおばさんによく叱られたものです。

 そうやって支え合って生きていくことが必要になってくる時代が、また来るのかなぁと思います。

 

 そして、やりたいことがあるのにやれなかった人と、それを見つけられなかった人はどっちがいいのか。

 やりたいことは特別である必要はないし、やりたいことがないことはダメではない。焦らなくてもいいのだと。目的を見失った人たちにそんなふうに訴えているところは、とても印象的でした。

 普通に生きていくってそういうことなのでしょうね。

 

 物事がうまく進まなくても、人生はそこで終わりではないし、何とかなると思わせてくれる。そんな物語でした。