【あらすじ&ひとりごと】
森絵都さんの作品をはじめて読みました。
教育への一途さに圧倒されました。
戦後のベビーブームと経済成長を背景に、昭和から平成の塾業界を舞台にした物語です。
日本における学習塾の変遷、そして教育論、とてもスケールの大きな小説でした。
小学校の用務員・大島吾郎は、教員免許はないが、学習を教える才能があり、子どもたちに補習を行っていた。
そんなとき、児童の赤坂蕗子の母・千明が現れ、自分の立ち上げる学習塾に来てほしいと依頼される。
吾郎は、女手ひとつで蕗子を育てる千明と結婚し、ともに塾を立ち上げ、家族の奮闘により、塾を順調に成長させていく。
しかし、ふたりの教育論がしだいに分かれていく。
蕗子は、理想の教育論について「理想理想ってお母さんは言うけど、本当はそんなものがあるんですか。あるとしたら、どこに?」と母・千明に問い、理想の教育は母親の幻想だと切り捨てる。
時代とともに、塾は進学塾へと形態が変わっています。教育は文字のとおり、教え育むことで、子どもたちの持つ資質や能力を引き出すこと。
そして、学ぶ喜びを知ってもらうことだと常日頃思っています。
千明が言った、
学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在だと思うんです。
とても印象的なことばでした。