【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、土屋うさぎさんの小説『謎の香りはパン屋から』(2025)
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。五つの連作短編です。
それぞれパンにまつわる小さな出来事や人間関係の違和感を題材にした「日常の謎」が描かれています。
事件や犯罪ではなく、人の気持ちやすれ違いに焦点を当てた優しいミステリです。
舞台は大阪府豊中市にあるパン屋「ノスティモ」。漫画家を目指す大学一年・市倉小春は、ノスティモでアルバイトをしている。
ある日、親友から一緒に行くはずのライブビューイングを突然キャンセルされたことをきっかけに、小春は身近な出来事に隠された“謎”を次々と解き明かしていく。
テンポの良さがとても印象的な作品でした。舞台が大阪ということもあって、登場人物同士の会話が軽快で、読んでいて心地よいリズムがあります。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作と聞くと、本格的な事件や驚きのトリックを想像しがちですが、登場するのは日常の中に潜む小さな謎ばかり。
犯人を追い詰めるような緊張感ではなく、人の気持ちや勘違い、ちょっとした違和感を小春が丁寧に解きほぐしていきます。
一方、謎解きの過程で「そこまで推理できるかな」と少し都合よく感じる場面もありましたね。
でも、それ以上に作品全体を包む温かな雰囲気や、焼きたてのパンの香りまで伝わってきそうな描写が素敵です。
重厚なミステリではないけど、「人の死なないミステリ」や「ほっとできる日常ミステリ」を読みたい人にはぴったりの一冊。
パン好きの方なら、きっとパン屋へ足を運びたくなるはず。
読後、私は何だか無性にカレーパンが食べたくなりました。
続編が出ているので、次はどんな日常の謎があらわれるのか、また楽しみですね。
