【あらすじ&ひとりごと】
京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ第六作『塗仏の宴 宴の支度』。
前編にあたる作品です。
本作もシリーズを通して関わってきた個性ある登場人物たちが、それぞれ異なる場所で、また異なった事件に巻き込まれていきます。
そして、背後に隠れた謎が徐々に明らかになり、すべてが関係している事実に繋がっていきます。
文士・関口は、戦前存在していた村・静岡県韮山山中の消えてしまった「戸人村(へびとむら)」を探してほしいと依頼される。
地図や記録、近隣住民の記憶もない、すべてが抹消された村。
関口は現地に赴き、地元警官と、そこで出会った郷土史家・堂島とともに「戸人村」のあった場所を訪れ、ある屋敷を発見する。
一方で、祓い屋であり陰陽師でもある古本屋「京極堂」の店主・中禅寺秋彦の妹・中禅寺敦子、刑事・木場修太郎、探偵・榎木津礼二郎たちもそれぞれ異なった謎に直面し、彼らの置かれた状況も複雑に絡み合いながら、物語は大きな陰謀の存在が見えはじめ展開していく。
この前編の『宴の支度』では、各キャラクターの視点での事件が描かれ、そしてひとり一人の生い立ちや境遇なども今作はより深く描かれています。
それぞれの事件は独立しながらも、次第に一つの大きな流れへと収まっていくのですが、なかなか全貌が明らかにならないため、純粋に謎解きを期待していくと、じれったさを感じますね。
でも、シリーズならではの独特の会話や、特に京極堂の蘊蓄、榎木津の破天荒な言動、木場の脅し文句は健在で、1000頁近い長編ながら展開の遅さを感じつつも、京極堂を誘き出す後編『宴の始末』への期待を高める序章としては、とても巧妙ですね。
終盤に関口が逮捕され、不穏な読後感を残しながら、「宴の支度」は完了し、後編『宴の始末』へ。
京極堂が事件に乗り出し、どのように「始末」をつけるのか。このままの勢いで後編へ行くしかないですね。
