【あらすじ&ひとりごと】
今回は、京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ第8弾『陰摩羅鬼の瑕』(おんもらきのきず)
この作品も1000頁を超える大長編。読んでも読んでも頁が減らない、登場人物の会話や独白が続き、1000頁を超えたところで漸く物語の真相が見え始めてきます。
もちろん独特の文体と心理描写、そして妖怪をモチーフにしたミステリは緻密で、単なるミステリ作品とは言えない作品でした。
さらにここでも「長い語り」は冗長ではなく、京極作品らしい奥行きと重厚さをつくり上げていますね。
白樺湖畔にそびえる洋館「鳥の城」の主「伯爵」こと、由良昻允(ゆらこういん)。
幼い頃からこの館に飾られた数百羽の剥製の鳥たちを家族として暮らしている。
館内では、昻允とその婚約者である奥貫薫子との結婚式が行われようとしていた。
昻允にとって5度目の婚礼であり、この23年間に4度、花嫁を迎えているが、初夜の翌日に何者かの手によって、いずれも4人が命を奪われているという。
5度目の婚礼を控え、花嫁を守るよう依頼された探偵・榎木津礼二郎と、付添いとして同行した文士・関口巽が白樺湖畔へ向かい、由良家の悲劇を防ごうと奮闘する。
そして、嫁いだ花嫁の命が次々と奪われるその訳を「京極堂」こと・中禅寺秋彦が解き明かす。
本作品は「無意識の罪」をテーマに、生きていることの意味を深く、悲しく描いていました。
昻允の家族は、館にいる動くことのない剥製の鳥たち。動かなくなることが家族になること、死とは無くなる(物体が)こと。
閉ざされた世界の中で生きてきたことで、誰からも教えられず、自身で書物を読み学ぶが、生と死に対する概念、家族になるという概念が違った形で自身に植え付けられてしまったのですね。
その果てが、最愛の相手に悪意のない無意識の犯罪を続け、自身が一番悲しむ悲劇を繰り返してきたというとてももの悲しい作品でした。
シリーズ第8弾、今回は複数の事件が絡み合う複雑なストーリーではなく、一カ所で起きた事件の中心人物に宿る心の傷を京極堂が優しく解き明かす、読後胸の奥に重石が残ったような感覚でした。
