ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】犬丸幸平『最後の皇帝と謎解きを』ー 読後に少し切なくなる歴史ミステリー ー

【あらすじ&ひとりごと】

 今回読んだのは、犬丸幸平さんの小説『最後の皇帝と謎解きを』(2026)

 1920年代の紫禁城を舞台にした歴史ミステリーです。清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の史実と組み合わさり、時代背景をきちんと盛り込んだユニークなミステリー。物語世界に入りやすくておもしろかったです。

 

 

 舞台は1920年の北京。辛亥革命によって皇帝の座を追われた愛新覚羅溥儀。いまだ紫禁城に住みながら、清朝復活の野望を捨てきれずにいる。

 そんなとき、日本人絵師の一条 剛(いちじょう ごう)が溥儀の水墨画の師として紫禁城へ招かれる。

 その真の目的は、紫禁城に残る名画の贋作を作成し、真作とすり替え、真作を売却して清朝復興の資金をつくるという危険な計画に協力することだった。

 

 計画の中、宮中で宦官が密室で死亡する事件が発生するなど、紫禁城では不可解な出来事が次々と起こり、一条 剛は若き皇帝とともに真相を追う。

 

 

 清朝時代のややこしい物語かと思いましたが、とてもユニークなミステリーでした。時代背景も適度でわかりやすいです。

 舞台設定が紫禁城というのが、巨大な宮殿であり、外部から閉ざされた閉鎖空間という意味でミステリー感満載でしたね。

 

 また、溥儀が単なる歴史上の人物ではなく、未熟さや孤独を抱えたひとりの青年として描かれていたのが印象的です。映画「ラストエンペラー」も観ましたが、とても人間味を感じました。

 

 一条と溥儀。当初は反発し合っていた二人が事件を通して少しずつ信頼関係を築いていく。溥儀は、一条を友人としていつまでもそばにいてほしいと願う。

 そして物語後半では、歴史の大きな流れの中で「最後の皇帝」として生きる溥儀の孤独さが浮かび上がり、歴史背景が物語にしっかり絡んでいて、単なる謎解き小説では終わらない余韻を残しますね。

 ミステリー部分もおもしろいですが、読後に残るのは時代に翻弄する若者たちの切なさです。