【あらすじ&ひとりごと】
「日常から逃げ出したいあなたへ」
「美味しいごはんと、不思議な従業員がお待ちしております」
そんな帯に目が留まり、手にした古内一絵さんの『山亭ミアキス』。
「ミアキス」って聞いたことがある言葉だなぁとググってみると、イヌやネコ、アシカなどの祖先である太古の動物。なるほど表紙もしっかりクロネコでした。
古内さんの作品は初読みです。
ファンタジーの中に、幼児虐待やパワハラ、セクハラなどの社会問題が盛り込まれ、ダークでちょっとしたホラーファンタジーの様相でした。
心に迷いや悩みを抱える人たちが、迷い込んだ先にある「山亭」。
そこには、美形のオーナーと不思議な従業員、そして絶品のアイルランド料理でもてなされる。
でも、泊まると酷い目に遭わされる宿。
山亭を訪れる迷える人たちは、かつてのアイドル少女や、父親になることを逃げる男、がんばってきたが今の現状を受け入れられない女、ブラック部活に疲弊する少年、マタハラに悩む女。
そんな人たちが救いを求めてたどり着く、連作短編です。
元々は、この五編のそれぞれが作品だったようですが、単行本化するにあたって「序」と「終」を追加したとのこと。
五編はありがちなストーリーですが、この「序」と「終」が加わったことでグッとくるものがあります。
ダークなファンタジーの様相の中にも、心の浄化や救いが感じられ、ビターな読後感ではあるけれど、優しさと苦さが調和された作品でした。