ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】『山亭ミアキス』古内一絵 著

角川書店(2021)

【あらすじ&ひとりごと】

「日常から逃げ出したいあなたへ」

「美味しいごはんと、不思議な従業員がお待ちしております」

 そんな帯に目が留まり、手にした古内一絵さんの『山亭ミアキス』。

 「ミアキス」って聞いたことがある言葉だなぁとググってみると、イヌやネコ、アシカなどの祖先である太古の動物。なるほど表紙もしっかりクロネコでした。

古内さんの作品は初読みです。

 

 ファンタジーの中に、幼児虐待やパワハラ、セクハラなどの社会問題が盛り込まれ、ダークでちょっとしたホラーファンタジーの様相でした。

 

 心に迷いや悩みを抱える人たちが、迷い込んだ先にある「山亭」。

 そこには、美形のオーナーと不思議な従業員、そして絶品のアイルランド料理でもてなされる。

 でも、泊まると酷い目に遭わされる宿。

 

 山亭を訪れる迷える人たちは、かつてのアイドル少女や、父親になることを逃げる男、がんばってきたが今の現状を受け入れられない女、ブラック部活に疲弊する少年、マタハラに悩む女。

 そんな人たちが救いを求めてたどり着く、連作短編です。

 

 元々は、この五編のそれぞれが作品だったようですが、単行本化するにあたって「序」と「終」を追加したとのこと。

 五編はありがちなストーリーですが、この「序」と「終」が加わったことでグッとくるものがあります。

 

 ダークなファンタジーの様相の中にも、心の浄化や救いが感じられ、ビターな読後感ではあるけれど、優しさと苦さが調和された作品でした。