【あらすじ&ひとりごと】
書店で本書を見かけたとき、昔、山口百恵さんの歌にこんなタイトルがあったなぁと思いながら手にしました。
きっと恋愛小説なのだろうと思い読み始めると、そうではありませんでした。
人が亡くなったとき、最後に一日だけ現世に戻ってくることができ、会いたい人に会う時間が与えられる。
辻村深月さんの『ツナグ』のようですが、本書では「会える人」の条件が違います。
自分の死をすでに知っている人には会えないという。
さよならの向う側と呼ばれる場所にいる案内人が、さまざまな人をエスコートし最後の再会を果たす物語です。
5篇(5人が織りなす再会)からなる連作短編で、読みやすくて、やさしいタッチの文章がどんどん自分の中に入ってくるんだけど、その分涙が出てくる。
そして案内人ののんびりしたところにほっこりしながら、最後ははじめの涙と違った温かい涙が流れている、そんな小説でした。
どの短編もストーリーが類似することなく、切なさがグッときますが、今生きることの意味をふと考えさせてくれます。
そして、気になる案内人。
どのような過去をもった人なのだろうと不思議に思っていると、やはり最終話で事実が明かされます。
生きることって、人と繋がっていて、その存在を認識されてはじめて生きていると実感する。
そんな当たり前のようなことを改めて思わせてくれました。
この本は、だれも生き返ることはないのに、どうしてどの物語もこんなにも幸せな気持ちにさせる結末なのだろう。そんな小説でした。
続編が出ているのでまた楽しみです。
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