【あらすじ&ひとりごと】
岩城けいさんの作品は初読みです。
大学卒業後、単身渡豪された作家さんです。
本書は少し前に書かれたものですが、太宰治文学賞などを受賞され、芥川賞候補にもなったとのこと。
在豪中のご自身のご経験から書かれた作品ではないかと思われます。
アフリカ難民の女性が異国の地で夫に逃げられ、精肉作業場で働きながら2人の子を育て、異郷で強く逞しく新しい生活を切り拓いていく物語です。
オーストラリアに移民し生活する主人公・サリマの生活が描かれ、また「S」という女性が綴る手紙でのふたつの視点から物語は進みます。
サリマは、母語の読み書きすらままならず、職業訓練学校で英語を学びはじめ、日本人女性「ハリネズミ」と出会うが、ここからふたりの人生が変わっていく。
読み進めるうち、「S」の手紙には「ナキチ」という女性が登場し、これがサリマなのか。
そして「S」とはハリネズミなのだろうと思い始めますが、最後に意外な事実がわかります。
日本文学において、私が知らないだけかもしれないけど、難民文学はあまり記憶がありません。
アジアやアフリカの難民問題は、徐々に身近に感じるようになってきたと思いますが、まだまだ日本人にとって縁遠いことかもしれない。
オレンジ色のイメージが生み出す哀しみと温かさ。160頁程度の物語ですが、深い思いが刻まれて、タイトルの思いが印象的でした。
難民文学のこれからを照らした作品だと思います。
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