【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、金子玲介さんの小説『死んだ山田と教室』(2024)
奇想的な設定ですが、まっすぐに高校生の青春の”熱量”を描いた作品。
奇想を通じて、「生きる意味」「時間の儚さ」を考えさせられる一冊でした。
クラスの人気者・山田が、夏休みの終わる直前に交通事故で亡くなった。そこから物語は始まります。
二学期、重い空気が流れる2年E組。教室の真ん中にぽっかり空いた山田の席を見て、生徒が凹まぬようにと、担任が席替えを提案する。
すると、教室のスピーカーから”山田の声”が流れ始めた。
そこから、なぜか声だけの存在としてE組に居続ける山田と、山田の死と向き合い、笑ったり悲しんだりと、日常を送るクラスメイトたちとの不思議で切ない日々が描かれる。
教室に「死」を持ち込まないまま笑いが続く前半と、じわじわ息苦しさが増す後半。まさにその差がこの作品の魅力ですね。
読みはじめは、「死んだ友達がスピーカーから話す」という突拍子のない設定が、むしろ”死”を遠ざけていて、いつもの日常がある笑いの多い軽やかな青春小説。
特に、スピーカーからひとり話す「土曜深夜のファイア山田のオールナイトニッポン」のくだり。これは最高でしたね。
オープニングの「♫ちゃらっちゃ。ちゃっちゃらら、ちゃっちゃちゃ。ちゃっちゃらら、ちゃっちゃちゃ。ちゃらっちゃちゃ。ちゃらっちゃちゃんちゃんちゃん」を山田が口で再現するのがおかしくて、あの音楽が頭をかけめぐって自分でも笑えます。
でも、読み進めるほど、「笑っていれば大丈夫」ではなくなっていく現実が少しずつのしかかってきます。
山田の声がそこに”いる”のに、体はどこにもない。そんな矛盾した現実が読者にもじわじわ効いてきて、教室に漂う喪失感が濃くなっていく感じが苦しくもあり、良いところですね。
ただの不思議な設定の小説ではなく、仲間を失うとはどういうことか、そして、それでも日常は続いていくという現実。
そうしたものに真正面から向き合わせてくれる一冊だったと思います。
