【あらすじ&ひとりごと】
小川糸さんの作品は『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ライオンのおやつ』を読みましたが、『食堂かたつむり』はそれ以前(2008年)に刊行されたもので、イタリアの文学賞バンカレッラ賞料理部門賞を受賞した作品です。
今回も温かい人間愛が描かれています。
本作品は、映画化されています。
同棲する恋人に家財道具一式を持ち逃げされたショックから失語症となった主人公・倫子は、嫌いな母親のいる田舎に帰り、「食堂かたつむり」を開く。
客は一日一組。ここでの料理を食べた客には奇跡が起き、願いが叶う食堂と噂が広がる。
かたつむりの殻の中で自分の世界と料理の世界に引きこもるが、ある日、倫子の母親が癌で余命半年であることがわかり、反発しながらも子どもの頃からの確執が少しずつ解けていきます。
食材として命を大切にいただき、魂を込めた料理で人を幸せにすることにより、自分自身に向き合っているのだと感じました。
最後に思いがけぬ場所から出てくる母親からの手紙は、何とも切なく、これから強く生きていかなければならない励ましのことば。
いつの時代も、親子の間にどんな隔たりや蟠りがあっても、親が子を思う気持ちは変わらないし、いがみ合ってもどこかで互いを大切に思っている。
これから社会がどう変わってもそうあり続けてほしいと思います。