【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、野﨑まどさんの小説『小説』(2024)
読書という行為の意味を問いかけながら、”小説を読むこと”そのものを肯定する物語です。読書好きには共感する一冊。
内海集司は五歳になった頃、父親を喜ばせる方法を発見した。それは読書。
本棚から『走れメロス』を手に取り、わからないながらも読み終え、喜ぶ父親を見て、内海は確信する。本を読んだことが父親を喜ばせたという事実。
医師である父親の期待に応えるために読み始めた読書だったが、やがて彼にとって小説は何よりも大切なものになっていく。
小学6年生のとき、内海が図書室で本を読んでいるとクラスの違う外崎真から話しかけられ、貸した一冊の本から二人の読書が始まっていく。
二人は学校の裏にある謎の小説家が住む「モジャ屋敷」に忍び込み、髭モジャの「髭先生」と知り合う。先生は、屋敷にある膨大な蔵書を自由に読むことを許してくれ、二人は読書に没頭していく。
二人は成長するにつれ、内海は「読む」、外崎は「書く」ことに道が分かれ、内海はただ小説を読むだけの自分に疑問を抱く。
そして、そんな葛藤を抱く内海の前から、ある出来事がきっかけで外崎は姿を消してしまう。
親友を捜す内海の旅。やがて物語は壮大なものへとつながり、すべての出来事の背後にあった秘密が明らかになる。
物語の中心にあるのは、「小説とは何か」「なぜ人は小説を読むのか」。
内海は、小説を読むことが心から好きで、その反面、「読むだけで何も生み出さない」自分を苦しく感じていきます。
この感覚って、読書好きな人ほど共感するような気がしますね。小説に没頭する時間は楽しい、その一方で「自分は読んでいるだけ」という寂しい思いもあるのかもしれないけど、普通の人は読書そのものをまさに楽しんでいるだけですよね。
物語の終盤はスケールが広がり、SF的な展開になっていきます。そこは抽象的で少しファンタジーのようにも感じられ、戸惑うところもあります。
でもここで語ろうとしているメッセージは、小説を読むことには意味がある、ということ。物語は、人の心に新しい世界を生み、豊かにし続けるからこそ、「読むこと自体に価値がある」と示しているのだと思います。
読書好きな人ほど、この一冊にきっと心を揺さぶられますよ。私はなぜ小説を読むのだろうと改めて考えたくなる一冊でした。
