【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、中脇初枝さんの小説『天までのぼれ』
実在した土佐の女性・楠瀬喜多(袈裟丸喜多)をモデルにした歴史小説です。
中脇さんといえば児童文学のイメージ。これまで『世界の果てのこどもたち』『きみはいい子』『私をみつけて』『神の島のこどもたち』を読みましたが、どれも「こども」がテーマ。
でも、読み進めるうちに、やはり中脇さんらしい物語だと感じました。
物語の舞台は幕末の土佐。
身分制度が色濃く残る時代に町方の家に生まれた少女・喜多は、聡明で芯の強い性格を持っていた。
喜多は自分の信じる道をまっすぐに歩み、やがて土佐藩の志士たちが尊王攘夷の理想に燃える時代が訪れ、喜多の人生も大きく動き出す。
武士でも男でもない「女」として生きることの制限。理想と現実のはざまで苦しみながらも自らの足で人生を切り拓いていく。
物語の後半では、動乱の中で命を落とす人々の姿や、陰で支え続けた女性たちの強さが描かれ、喜多が覚悟をもって自分の人生を全うする姿に胸を打たれる作品です。
中脇さんの筆致は、いつも人の心の奥に寄り添うやさしさがありますね。「誰かを思う心」「理不尽な世に抗う意志」、そんな内面の強さに焦点が当てられています。
喜多は、時代に翻弄されながらも、「女だから」という言葉に押し込められることなく、自分の信念を貫く姿に現代を生きる私たちにも通じるものがあります。
幕末といえば、坂本龍馬など、男性志士ばかりが語られがちですが、本作はその影で生きた女性たちの視点から歴史を見つめ直す物語です。
名もなき女性がどう生きたのか、その姿を知ることができる、心に残る一冊です。
タイトルの『天までのぼれ』には、どんな境遇にあっても人は志をもって生きる、という希望が込められているように感じますね。
そして、本作は一見、幕末を舞台にした歴史小説ですが、根底には中脇初枝さんがこれまで一貫して描いてきた「こども」、「人が人を思う心」、「学ぶことの尊さ」というテーマもしっかり息づいています。
その根底に流れているものは、やはり「こどもへのまなざし」でした。
中脇さんの作品に共通する「人を信じる力」「思いやり」は、この歴史小説からも確かに伝わり、幕末の時代を生きた女性を描きながら、そこには現代の私たちにも通じる普遍的なメッセージも感じました。
とても良い読書時間でした。
