【あらすじ&ひとりごと】
中脇初枝さんの作品を読むのは3冊目。児童文学作家でもあり、童話や絵本も書かれています。
以前、『世界の果てのこどもたち』『きみはいい子』を読んで、子どもが生きる中で大人がどうあるべきかを描く物語がとても印象的でした。
これらの作品より以前に書かれた『わたしをみつけて』ですが、人が人を見守って・見守られる、そしてまた見守っていく、ということの大切さを感じました。
生後間もなく親に捨てられ、児童養護施設で育った主人公・山本弥生。名前は3月に生まれたから「弥生」ではなく、3月に捨てられたから。
自宅近くの病院に准看護師として勤務するが、仕事が終わると自分の殻に閉じこもり、自己否定を続けながら自分の居場所を見つけられずにいる。
そんな中、老人男性・菊地と出会い、そして新たに赴任してきた看護師長との出会いによって弥生の生き方が変わっていく。
親からの愛情を知らず、自分自身をも見つけられない弥生の心情がさらりと表現されているけど、とても痛々しい。
親に捨てられたり、虐待を受ける子どもたちがいなくなる時代はなかなかやってこないけど、それでも強く生きていけば、必ず見守ってくれる人が現れるはずだと思います。
人は人を傷つけるけど、人を救うのも人。世の中には悪い人ばかりではなくて、出会いによってきっと変わっていけるし、人を見守れば自分も見守られる、だから人を見守り続けようという物語でした。
私の住むまちにも児童養護施設があって、仕事で訪れたことがあるのですが、そこに暮らす子どもたちって、とても人懐っこいのです。そっと手を握ってきて、それを見たとき胸が締め付けられたのを思い出します。
いつの時代も子どもたちが平等に幸せを得られる世の中になってほしいです。