【あらすじ&ひとりごと】
今回読んだのは、朝倉かすみさんの小説『よむよむかたる』(2024)
生きがいを持つことが、どれほど人生を明るく照らすのか。良い読後感がそのまま伝わってくる作品です。
舞台は北海道小樽。古民家を改装したカフェ「喫茶シトロン」で、月に一度ひらかれる読書会。
その名も「坂の途中で本を読む会」。
メンバーは、上は92歳から下は78歳といずれも高齢者と呼ばれる年齢になった男女6人。
いかにも個性的なこのメンバーらしい、少し自嘲気味で、でもどこか愛おしいネーミングですね。
この読書会の進め方は独特で、一冊の本を章ごとに分担して読み、その章を担当した人が朗読し、他のメンバーが朗読のうまさと内容について一人ずつ感想を述べていく。
正解を出すためではなく、「どう感じ、心に残ったか」をそれぞれが丁寧に言葉にしていく時間。
物語は、読書会を中心に進みながら、それぞれのメンバーがこれまで生きてきた人生や、老いとともに変わっていく日常、抱えてきた思いが少しずつ浮かび上がってきます。
本を「読む」「語る」という行為を通して、彼らの人生が確かに今も続いて、今だからこそ味わえる時間があることが静かに描かれていきます。
月に一度、同じ場所に集い、同じ本を読み、自分の声で朗読し、言葉に耳を傾ける。その時間そのものが彼らの生活の芯になっています。
交わされる感想は温かくて、脱線をして、ときにはイライラするけど、否定も見下しもない、認め合う空気がとても心地良いです。
年を重ねると、できなくなることは確かに増えますよね。けれども同時に、味わえる深さは増えていくかもしれませんね。
読書会の時間は、人生を照らし出し、「今ここで生きている」という実感を確かなものにしている。幸せとは、きっとこういう時間なのでしょうね。読み終えて、そんなふうに感じました。
私も年をとって、身近にこんなサークルがあればいいなあ。
自分の生活にも光を置いてくれるような一冊でした。
