ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む内向的な元公務員モグラが見たこと、感じたことを気ままに発信する雑記ブログ

【読書】『ピエタ』大島真寿美 著

ポプラ社(2011)


【あらすじ&ひとりごと】

 

 大島真寿美さんの『ピエタ』。

 18世紀絢爛の水の都ヴェネツィアを舞台にした、とても美しい作品でした。

 

 『ピエタ』というタイトルからは、ミケランジェロの彫刻像を私は最初に思い出す。

 イタリア語で「哀れみ、慈悲」。

 ページを開くと、それが孤児を養育する「ピエタ慈善院」であることに気付きます。

 

 物語は、ピエタ慈善院で育ったエミーリアという女性の視点で描かれる。

 ピエタで音楽の才能に秀でた女性だけで構成する「合奏・合唱の娘たち」を指導していた『四季』の作曲家であるヴィヴァルディの訃報がエミーリアに届くところから始まっていく。

 

 そして、教え子であるエミーリアは師であるヴィヴァルディの一枚の楽譜を探すため、恩師と関わりのあった人々を訪ね、思いがけない真実へと導かれていく。

 

 これは史実を基に描かれていて、ヴィヴァルディが残した一枚の楽譜の行方を追いつつ、ヴェネツィアに生きる女性たちを描いた静かな美しい物語でした。

 

 中世ヨーロッパの描写がそれほどなかったにもかかわらず、ヴィヴァルディが、そしてヴェネツィアに生きる女性たちがゴンドラに乗り、大切な人に会いにいく。その情景だけでも美しさを感じる。

 

 そして、物語に流れるヴィヴァルディがピエタの「合奏・合唱の娘たち」のために書いたという協奏曲「L'estro Armonico(調和の霊感)」がとても象徴的でした。

 

 翻訳された海外作品を読んでいるような雰囲気で、いつもと違った充足感を味わうことができました。

 

【読書】グリム童話『夜うぐいすとめくらとかげの話』『うまい商売』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その5

『夜うぐいすとめくらとかげの話』〈KHM6〉

【あらすじ&ひとりごと】

 昔、目玉を一つずつしか持たない「夜うぐいす」と「めくらとかげ」が仲良く暮らしていました。

 ある時、うぐいすは婚礼に呼ばれますが、自分の目が一つしかないことが気になり、とかげに明日返すから一日だけ目を貸してほしいと頼みます。

 とかげは承諾し、自分の目をうぐいすに貸しますが、うぐいすは両側を一度に見られることがうれしくなり、翌日になってもとかげに目を返しません。

 

 そのため、2匹は仲違いし、とかげはうぐいすに、子どもたち、そしてその子どもたち、そのまた子どもたちに仕返しをするから覚えていろと恨みます。

 

 うぐいすは、巣から「ゾーホーホ ゾーホーホ(高いぞ高いぞ)」と鳴き、目は二つあるので、目のない空も飛べないめくらとかげの存在は怖くありません。

 けれども、夜うぐいすが巣をつくる木の下には、決まってめくらとかげの巣があり、卵の中身を空っぽに吸い出してやろうと狙っています。(要約)

 

恩を仇で返すと恨みをかいます。受けた恩は決して忘れてはいけませんね。

 

うまい商売〈KHM7〉

【あらすじ&ひとりごと】

 お百姓が自分の牝牛を七ターレルで売り飛ばしました。

 帰りに池のそばを通り、蛙の「アク、アク、アク(8、8、8)」という鳴き声が聞こえます。

 

 お百姓は「売った代金は七だぞ、八なもんか」と言う。でも蛙たちは「アク、アク、アク」と言うばかりです。

 

 それなら、蛙たちの前で勘定してやろうと、お百姓は七ターレル勘定しました。

 けれども蛙は「アク、アク、アク」と言うばかりです。

 それなら自分で勘定してみろと、お金を池に放り込みます。

 お百姓は蛙が勘定して返してくれるのを待ちますが、蛙たちは「アク、アク、アク」と言うばかりで、お金も返ってこず、日が暮れてきたので帰ることにしました。

 

 それから、お百姓は牝牛を殺して、肉を売れば牝牛2頭分くらいのお金になりそうだと、その肉を持って町へ行くと大きな犬が「ワス、ワス、ワス(少し)」と吠えています。

 この肉が欲しいから吠えているのだと思い、くれてもいいが儲けがなくては困る。その犬の奉公先もよく知ってるから、三日経ったら代金をもらうと言って、お百姓は肉を置いて帰りました。

 

 三日経ち、お百姓は金が入ると楽しみにしていましたが、誰も金を持ってこず、犬の奉公先の肉屋へ行って代金を払ってもらおうとします。

 肉屋はかんかんに怒って、お百姓を店から叩き出しました。

 

 お百姓は訴えるために王様を訪ね、王様とお姫様の前で、蛙と犬どもが、自分のものをとったと、詳しく話しました。

 それを聞いたお姫様がげらげら笑いだし、王様は、お前は正しいとはいえないが、今まで一度も笑ったことがない娘を笑わせたので、礼に私の娘をお前にやる、と言います。

 

 ところがお百姓は、お姫様などいらない。自分にはかかぁが一人いる。ただでさえそれでいっぱいだと答える。

 王様は礼儀知らずと腹を立て、別の褒美を五百だけつかわすから、三日経ったら来るようにと言いました。

 

 お百姓が城から出てると、番兵に褒美を五百もらったと言います。

 すると番兵が分けてくれと言うので、二百くれてやるから三日経ったら、王様のところへ行くようにと話します。

 そして、そこにはユダヤ人も近くにいて、ターレルの銀貨ではしょうがないと、両替をして小銭に取り替えてあげましょうと言う。

 するとお百姓は、お前には三百やるから今すぐ小銭でくれと。三日経ったら、王様のところでもらえるからと話します。ユダヤ人はグロッシェン通貨を3つ渡しました。

 

 三日経って王様のところに行くと、王様は五百をつかわすと言います。

 お百姓は、その五百ならもう自分の分ではない。二百は番兵に分け、三百はユダヤ人が両替してくれたと話します。

 やりとりするうちに、その番兵とユダヤ人が入ってきて、自分たちの分け前をくれと言いました。

 すると、その数だけ殴られ、番兵は慣れていたのでじっとしていましたが、ユダヤ人のほうは、これが約束のターレルの銀貨かと、ひーひーわめきました。

 

 王様はお百姓のしたことがおかしくなって、今までの腹立たしさもなくなり、お百姓に褒美をもらいもしないうちになくしてしまったから、埋め合わせをしてやろうと、城の蔵へ入って、欲しいだけ金を持ち出すがよいと話します。

 

 お百姓はすぐに行って、ポケットの中に入るはだけ金を詰め込み、料理屋へ行って、勘定を始めました。

 そして、王様の文句をブツブツ言いました。この言葉を後からつけてきたユダヤ人が王様に言いつけます。

 王様は怒り出して、ユダヤ人にお百姓を連れてこさせます。

 

 お百姓は行くことにしますが、金をたくさん持っている自分がこんな古い着物を着てはいけないと言い出します。

 そこでユダヤ人は、自分のきれいな着物を貸しました。

 

 王様のところに行くと、王様はユダヤ人から悪口を聞いたとお百姓を叱りました。

 そこでお百姓は、ユダヤ人の言うことは嘘です。自分が着物も借りて着ているとありもしないことを言うと話しました。

 すると、ユダヤ人は、王様の前に出られるよう、貸してやったものではないかと言う。それを聞いた王様は、自分か百姓か、どちらかをユダヤ人が騙したに違いないと言い、ユダヤ人を殴らせました。

 

 お百姓は良い着物を着て、お金をたくさん持ってうちへ帰りました。

 今度こそ、うまくやったとお百姓が言いました。

 

 これは少し翻訳が分かりづらい作品でしたね。

 でも喜劇で楽しむことはできました。

 要領よく人を出し抜いて得をする、欲張りが損をする。なかなか賛成できることではありません。

 誠実に生きていきましょう。

 

 グリムには、ユダヤ人が損な役回りがいくつかあります。これもとても気の毒ですね。

岩波文庫(1979)

 

【読書】『ひと』小野寺史宜 著

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【あらすじ&ひとりごと】

 

 小野寺史宜さんの本を初めて読みましたが、とても素敵な作品でした。

 

 先行き不安で悲しい現実を突きつけられているのに、なぜかニンマリと微笑ましくストーリーが進んでいく。

 

 鳥取から上京し私大に進学した主人公・柏木聖輔20歳。

 しかし、両親を亡くし一人となった聖輔は大学を中退する。

 仕事を探そうと思いつつも動き出せない日々が続くが、ある日、空腹から揚げ物の匂いに吸い寄せられ、砂町銀座商店街へと歩くと「おかずの田野倉」にたどり着く。

 最後に残った50円のコロッケを買おうとするが、見知らぬお婆さんに譲る。

 そこから新たな出会いと自身の未来への再生が始まる。

 

 聖輔の誠実さと優しさが心に沁みる。

 そして聖輔を囲む人たちの温かさが何とも言えない。

 なんだか悲しくないのに涙が出てくる。

 短いセンテンスで小刻みに綴る文章が、聖輔の気持ちをより際立たせ、その言葉ひとつひとつが明るく感じさせながらも、胸に突き刺さってくるからなのかもしれない。

 

 人の優しさに気付いて、また新たに人に優しさを与える。

 そうやって互いを思いやることで信頼し合えれば、頼ったり頼られたりと、たとえひとりきりになっても決してひとりぼっちではないのだと思わせてくれる。

 

 人との関わりが少なくなった現代だからこそ、そんな人と人がつながる社会を望む作者の思いなのかなぁと思います。

 

 小野寺さんの作品『ひと』の次は『まち』、そして『いえ』が出版されています。

 ぜひ順番に読んでいきたいと思います。

 

きょう、大阪のヤンマースタジアムまでミスチルのコンサートに行ってきました。とてもよかったです。52,000人のひとが、ひとつになっていました。

【読書】『火のないところに煙は』 芦沢央 著

【あらすじ&ひとりごと】

 

 芦沢央さんの本は初めてです。作風も知らず、予備知識もなく手にした本、『火のないところに煙は』。

 

 本書はホラー作品なのか、怪談の実話なのか。

 ストーリーは、小説新潮から作家(私)に「神楽坂を舞台にした怪談」の執筆依頼がくることから始まる。

 「私」は迷いつつも過去の悲劇について執筆を始める。

 

 6話の短編を語るように綴られていて、ホラーとかミステリ小説というよりか、体験談を淡々と話しているような、なんかドキュメンタリーっぽさを感じる。

 そんな疑問を持ちながら、読み進めました。

 

 これは芦沢さんが体験(聴いた)したことなのか、あとがきも何もない。

 すべて文章が「私」となっているので、芦沢さんご自身のことだろうかと思わずにはいられない。

 そんな臨場感を感じながら、一話一話の伏線が回収され、結末がはっきりしないところに消化不良を感じつつも、それは現実に起こったことだからと、自分なりに納得し殊更背筋が冷たくなるのを覚えました。

 

 そして、本書のカバーの裏側に血の落ちた染みが印刷されています。

 「染み」という一話があるので、なるほどそういうことかと思っていましたが、読み終えたあとにその染みは作中にあった無数の「ある文字」で書かれていたことに気付きました。

 手が凝ってますね。見落とすところでした。

 

 暑くなる季節に一歩早い納涼の本でした。梅雨が明けた熱帯夜にでもいかがでしょうか。

新潮社(2018)

 

【読書】グリム童話『狼と七匹の子やぎ』『忠臣ヨハネス』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その4

『狼と七ひきの子やぎ』<KHM5>

【あらすじ&ひとりごと】

 お母さんやぎと7ひきの子やぎがいました。

 ある日、お母さんやぎが森へ食べ物をとりにいくため、7ひきの子やぎを呼び寄せ言い聞かせました。

 「お母さんは森へ行くから狼に気を付けるんだよ。うちに入ってきたらみんな食べられてしまう。狼は形を変えてくるけど、声はしゃがれ、足は真っ黒。すぐに見分けがつきますよ」と。

 

 子やぎたちも「気を付けるから心配しないで」というので、お母さんやぎは安心して出かけました。

 

 するといくらもたたないうちに、戸を叩くものが来て、「母さんですよ。お土産をもってきたよ、開けておくれ」と呼ぶ声がします。

 でも呼ぶ声がしゃがれていたので、子やぎたちは戸を開けません。

 

 次にまた、白墨を食べて声を良くした狼が「母さんですよ。お土産をもってきたよ、開けておくれ」と言いますが、真っ黒な前足が見えたので、子やぎたちはまた戸を開けません。

 

 最後に狼は、足にパン粉を付け白い粉を振りまいて白くし、やぎのうちの戸を叩きます。すると子やぎは狼に足を見せるように言いますが、足が白かったため戸を開けてしまいます。

 

 子やぎたちは、机の下や寝床の中、置きストーブの中、台所などに逃げ込みますが、狼に捜し出されすべて丸飲みにされてしまいます。

 

 お母さんやぎが帰ってくると、家の中がバラバラで子やぎがどこにも見当たりません。しかし、お母さんやぎが呼んでみると、時計の中に隠れていた末っ子やぎだけが狼から見つからず助かりました。(要約)

 

 結局、お腹いっぱいの狼は草原で寝ているところを母やぎにお腹をはさみで切られ、子やぎたちは助かります。変わりに狼の切られた腹には石を詰められ、泉で水を飲む際その重さで溺れ死んでしまいます。

 

 このお話は有名で私も読んだことがあります。ここでいう戒めはなんでしょう。今の時代もいろいろな訪問者がいます。

 むやみやたらと玄関を開けたりできません。インターホンや防犯カメラは必須でしょうか。

 

『忠臣ヨハネス』<KHM6>

【あらすじ&ひとりごと】

 王様の忠臣であるヨハネスは、王様の臨終の床で息子のことを頼まれ、命をなげうってまでも忠義を尽くすと王様に約束します。

 

 王様は息を引き取る直前、ヨハネスに「王子には城の中すべてを見せてやってほしい。ただし、長い廊下の先の小部屋は見せてはいけない」と言い残す。

 そこには、「黄金の屋根の国」の王女の立像があり、それを王子が見ると恋心を抱き気絶するという。

 

 王様の死後、ヨハネスは若き王様を城内の部屋に案内するが、絶対見せてはいけない小部屋を見られてしまい、そこには美しい王女の立像があり、目に入ったとたん王様は気を失ってしまいます。

 

 若き王様は、たちまち王女に惚れてしまい、ヨハネスとともに「黄金の屋根の国」に出向きます。

 

 二人は商人の振りをして王女に近づき、たくさんの金を見せて喜ばせ、船にはたくさんの金の品々があると言い、王女を船へと招き、連れ去ってしまいます。

 

 航海の中、ヨハネスは3羽のカラスが話しているのを聞きます。

 1羽のカラスは、「陸に着くと馬がくるが乗ってしまうと駆け出して消えてしまい、二度と会えなくなる。助かる方法はだれかが馬を撃ち殺すこと」と言います。

 

 また2番目のカラスは、「城に入ると花婿用の下着が用意されていて、それを着ると骨の髄まで焼かれてしまう。助かる方法はだれかがそれを燃やしてしまえばいい」と言います。

 

 そして、3番目のカラスは「婚礼のあと、舞踏が始まり王女様が踊り出すが、倒れてしまう。助かる方法はだれかが王女様の右の乳房から血を3滴吸い取り吐き出すこと」という。

 

 もしこれらのことを王様に話すと、話した者は石になるとカラスは話します。

 

 ヨハネスは、王様のためにこれらのことすべてを自分で対処します。

 しかし王様は怒り、ヨハネスを投獄し、死刑の判決を下します。

 

 最後にヨハネスは死刑台で王様に真実を伝え、王様から恩赦を与えられますが、ヨハネスは石になってしまいます。

 

 その後、王様には双子の息子ができました。

 石になったヨハネスを見て悲しむ王様にヨハネスは、「あなたが一番愛しているものを捧げてくださるなら私は生き返る」と言いました。

 王様は、子どもたちの首をはねて捧げると、ヨハネスは命が戻ります。そしてヨハネスが子どもたちの首を付けて、その傷口に血を塗ると生き返りました。(要約)

 

 このお話は読んだ記憶がありません。

 最後に真実を伝え、石になるヨハネスの誠実さが大きな魅力でしょう。

 信じてくれる人には最後までしっかりと忠義を尽くす。そしてそれに応える。

 人間にとって信頼関係は大切ですね。

岩波書店(1979)