ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む内向的な元公務員モグラが見たこと、感じたことを気ままに発信する雑記ブログ

【読書】『食堂かたつむり』 小川糸 著

【あらすじ&ひとりごと】

 

 小川糸さんの作品は『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ライオンのおやつ』を読みましたが、『食堂かたつむり』はそれ以前(2008年)に刊行されたもので、イタリアの文学賞バンカレッラ賞料理部門賞を受賞した作品です。

 今回も温かい人間愛が描かれています。

 本作品は、映画化されています。

 

 同棲する恋人に家財道具一式を持ち逃げされたショックから失語症となった主人公・倫子は、嫌いな母親のいる田舎に帰り、「食堂かたつむり」を開く。

 客は一日一組。ここでの料理を食べた客には奇跡が起き、願いが叶う食堂と噂が広がる。

 

 かたつむりの殻の中で自分の世界と料理の世界に引きこもるが、ある日、倫子の母親が癌で余命半年であることがわかり、反発しながらも子どもの頃からの確執が少しずつ解けていきます。

 

 食材として命を大切にいただき、魂を込めた料理で人を幸せにすることにより、自分自身に向き合っているのだと感じました。

 

 最後に思いがけぬ場所から出てくる母親からの手紙は、何とも切なく、これから強く生きていかなければならない励ましのことば。

 

 いつの時代も、親子の間にどんな隔たりや蟠りがあっても、親が子を思う気持ちは変わらないし、いがみ合ってもどこかで互いを大切に思っている。

 これから社会がどう変わってもそうあり続けてほしいと思います。

ポプラ社(2008)



【読書】『真夜中のたずねびと』 恒川光太郎 著

【あらすじ&ひとりごと】

 

 恒川光太郎さんの『真夜中のたずねびと』を読みました。

 本作品は、「ずっと昔、あなたと二人で」「母の肖像」「やがて夕暮れが夜に」「さまよえる絵描きが、森へ」「真夜中の秘密」の5篇からなる短編ホラーです。

 

 本の帯には「忍び寄る足音に、背筋が寒くなる連作集」とありますが、登場人物がリンクする部分や、恒川さん作品によくある同じ時間軸の上で各編が展開されているだけで、それぞれのストーリーは独立しています。

 

 各編に共通していることは、主人公を理不尽な不幸が襲うが、結末は闇へと消えていく曖昧な世界。

 人が生きているから話しているのか、死んでいるのに話しているのか、そして本当にあったのかどうかもわからない。

 正解のない、読み人にその後を想像させるような恒川さんらしい世界でした。

 

 これまでの作品と比較すると、幻想的な独特の世界観のある恒川ワールドが少し薄めで、今回は異常な心理描写を出したサスペンス要素の強い作品でしたが、人間の強さや弱さ、根底にある人間の本質の怖さを表現する恒川さんは健在で、十分楽しむことができました。

新潮社(2020)



【読書】『少年と犬』 馳星周 著

【あらすじ&ひとりごと】

 

 馳星周さんの作品『少年と犬』を読みました。直木賞受賞作です。

 馳さんの作品を読むのは久しぶりで、かれこれ20数年ぶりになるかと思います。

 

 馳さんの作品といえば、いくつか読んだ中でもやはり「不夜城

 新宿歌舞伎町を根城とした中国人たちの勢力争いを描くストーリーが未だに強く残っていてダークな印象が強い。

 

 そんな馳さんの印象からイメージがわかず、本作品に手を伸ばせずにいたのですが、遅くなりながらも読んでよかったです。

 人間と犬との共生がこんなにも優しく切なく描かれ、感動しました。

 

 本作品は、一匹の犬(名は多聞)が生きることに傷つき悩み苦しむ人間に温もりを与え、生きることへの希望を持たせる物語です。

 6話(6人の人びとと出会う)の中に温かさと悲しさがあり、いつまでも心に余韻が残ります。

 

 私も以前、小型犬を飼っていました。

 嬉しいとき、悲しいとき、人間が何も言わなくても犬はすべてをわかっていて、一緒に喜び悲しみ、寄り添ってくれます。

 いつかもう一度家族として迎え入れられたらいいなあと思っています。

 

 そして、本作品によって、犬を愛する人はますます好きになって、そうでない人は犬に対する思いが変わってくれれば嬉しいです。

 

 人間は動物と関わることで情操が育まれます。教えられることもたくさんあります。人間のよきパートナーとして大切にしていきたいですね。

文藝春秋(2020)



【日帰り旅】五千頭の龍が昇る聖天宮

 このゴールデンウィークに埼玉県坂戸市にある台湾の神社「五千頭の龍が昇る聖天宮」に行ってきました。

 その名のとおり龍が建物や壁、絨毯などに描かれ、その数は五千頭

 

 この坂戸市にある台湾の神社のほかに、横浜などにもあるそうですが、ここが一番古いそうです。

 

 この聖天宮は、中国台湾三大宗教(道教儒教、仏教)のひとつ「道教」のお宮です。

 開祖は台湾出身の康國典大法師で、お告げによって生国の台湾ではなく、日本国の何もないこの雑木林の地に台湾の一流宮大工を呼び寄せ、15年掛けて建てられました。

入口から見る天門

 この天門の左右に一対の獅子がいます。右が雄、左が雌。

 一石から彫られた獅子一対で、雄は「陽」、雌は「陰」を象徴しているそうで、雌のほうには子シシが母シシの鈴と遊んでいます。

獅子・唐獅子  

 天門から前庭を抜け、まず前殿に入ります。

 前殿入口には、「九龍柱」があり、これは一柱の岩から彫られた九頭の龍で、彫が深くとても石とは思えない彫刻でした。すごい技術です。

九龍柱  龍の頭を数えると9匹

 前殿に入ると、天井には「八卦天井(はっけてんじょう)」なるものがあり、八角形が重なる万物の広がりを表しています。神様が1,000人います。
 そして、「門神」が仁王立ちして見守っています。一枚の楠の板から彫られた門番の神様。雲に乗っています。

八卦天井      門神

 前殿を出て中庭を抜け、いよいよ本殿です。


 本殿の前には、「九龍網」。こちらも一枚の岩から彫られた九頭の龍。口と手にドラゴンボールがあります。神龍ですね。

 とても人間の手でつくったものとは思えません。

 

 本殿には、「八卦天井」とはまた違った「対極天井」というものが作られており、渦を巻いた、宇宙の始まりすべての始まりを表しているものでした。(本殿内からの撮影はできませんでした)

九龍網  本殿内

 休憩所の自動販売機には、台湾の飲み物や食べ物などが販売されています。ちょっとしたお土産にもなります。

 聖天宮には御朱印はありませんでした。変わりにスタンプを押してきました。

自動販売機の品物   スタンプ

 「五千頭の龍が昇る聖天宮」の豪華絢爛なつくりに圧倒されました。まるで天界にそびえる宮殿を思わせます。

 ほんの一部のご紹介ですので、まだまだ見どころはたくさんあります。

 

 台湾を訪れたことはありませんが、台湾に行ったようなひと時でした。

 台湾の一流の宮大工の方が一枚の岩や石に彫る龍は見事で、見応え十分です。

 拝観料500円でこんなにすばらしい悠久の世界を見せてくれますので、ぜひ訪れてみてください。

【読書】『罪人の選択』 貴志祐介 著

【あらすじ&ひとりごと】

 

 貴志祐介さんの『罪人の選択』を読みました。

 本作品は短編集です。

 「夜の記憶」「呪文」「罪人の選択」「赤い雨」の4編が収録され、連作ではありません。

 

 表題作である「罪人の選択」以外の3編は、遠い未来で異星人に侵略された地球人が、肉体は滅びながらも過去の記憶をチップに埋め込まれ、地球での過去を思い出すストリー(夜の記憶)や、神を呪うことで災厄を回避しようとする不思議な惑星の調査をするが、神による落雷でその惑星の民が亡くなるストーリー(呪文)など、近未来を描いているというより、SFの作品でとても難解でした。

 

 表題作の「罪人の選択」は、自分の選択によって「生」か「死」に直面する人間の心理をスリリングに描いたミステリーでした。

 罪人の前に出された一升瓶の酒と缶詰。どちらかに猛毒が入っている。

 さてどちらを選択するのか。

 与えられたヒントから考えを巡らすかけひきがドキドキします。

 

 「赤い雨」は、『黒い雨』を想像しました。

 この作品は、「チミドロ」という生物の胞子により真っ赤に染まった雨が降り注ぎ、生物絶滅の危機にある世界を救うため、若き女医が未知の病気「RAIN」の治療法を探るSFストーリーです。

 

 3編までを悶々とした気持ちで読んでいましたが、4編目で絶望の中に希望を捨てずに一筋の光があればそれを未来へと照らし出そうとする内容に気持ちがすっきりしました。

 そして、環境破壊・汚染への警鐘でもあるのかもしれませんね。

文藝春秋(2020)