ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『おくさま狐の御婚礼』

『完訳グリム童話集(二)金田鬼一訳』その38

『おくさま狐の御婚礼〈KHM38〉』

【あらすじ(要約)】

一番目の話
 昔、尻尾の九本ある古狐がいました。
 古狐は妻が心変わりしたのではと疑い、試してみることにしました。
 古狐は、まるで殺された鼠のように死んだふりをしていました。
 奥様狐は自分の部屋に閉じこもり、女中の嬢さん猫は煮物をしていました。
 やがて、古狐が死んだと知れると、大勢の求婚者たちが現れました。
 女中は誰かが戸を叩いているのを聞きつけ、戸を開けてみると、若い狐がいて「何をしているの?嬢さん猫ちゃん。寝てるの?」と言いました。
「寝てないわ。ビールを煮えたてて、バターを中へ入れてるの。あたしの客になって?」
「いや、ありがとう、お嬢さん。奥様狐は何してますか?」と狐が言いました。
 女中は「奥様は部屋にいて、悲し悲しと泣きはらす。かわいいお目目は紅絹のように紅い、お狐の古殿様がお隠れじゃもの」と答えました。
「お嬢さん、奥様にお伝えてください。若い狐が奥様に妻になっていただきたいと」
「かしこまりました」
 猫が戸を開きます。
「奥様、おいでですか?」
「いるわよ」
「奥様をお嫁にほしいという方が」
「どんな方?亡くなった殿様狐みたいに黄色いような青いような見事な尻尾が九本あること?」
「尻尾はたった一本です」
「ではその方はご免だわ」
 嬢さん猫は婿になりたい狐を帰しました。
 
 それから間もなく、また戸を叩くものがありました。別の狐が戸口にいて、奥様狐を嫁にほしいと言うのです。これは尻尾が二本でしたが、前のと似たり寄ったりの目にあいました。
 
 続いて他のが来て、尻尾も一本ずつ増えていましたが、どれもこれも追い返されました。
 
 ただ最後に来たのだけは、古殿様の狐とそっくり、九尾の狐でした。奥様狐はこれを聞くと大喜びで、猫に言いました。
「門と戸を開けて。おっぽり出すのよ、古殿様の狐を」
 ところが、いざ結婚式を挙げるという時になって、古殿様の狐が腰掛け台の下で動き出し、召使いを一匹残らず引っ叩き、奥様狐と一緒に家から追い出してしまいました。
 
二番目の話
 古殿様の狐が死んでから、奥様狐を嫁にほしいと言って、狼がやってきて戸を叩きました。女中猫は戸を開けました。
 狼は猫に「こんにちは、ケーレウィッツの猫さん、どうして一人でいるのですか?ご馳走はなあに?」と言いました。
「上等の小麦のパンを粉にして、ミルクの中に入れてるの。あたしの客になる?」
「ありがとう、猫さん」と狼は答えました。「奥様狐はいないの?」
「奥様狐は二階のお部屋、悲し悲しとおいおい泣いて、どうしたらいいかと泣いている、狐の古殿様がお隠れじゃもの」と猫は言いました。
 狼は「奥様狐がもう一度夫が欲しいなら、ここまで下りてくるように」と答えました。
 猫は階段を駆け上がり、戸を叩きます。
「奥様いますか?奥様がもう一度夫が欲しいなら、下まで下りてきてください」
 奥様狐は「その方は赤いズボンをはいてるの?とがった口をしているの?」とたずねました。
「いいえ」と猫は返事をしました。
「それでは私の役に立たないわ」
 狼が肘鉄砲を食わされてから、犬だの、鹿だの、兎だの、熊だの、獅子だの、あとからあとから森の獣が一つ残らずやってきました。
 けれども、どれもこれも、狐の古殿様が持っていた良い性質のうち、一つだけは決まって持ち合わせていなかったので、猫はそのたびに帰ってもらわなければなりませんでした。
 
 やっとのことで、若い狐がやってきました。
 奥様狐が「その方は赤いズボンをはいているの?とがった口をしているの?」
「そのとおりです」と猫が言いました。
「それなら、お通しして」と奥様狐は言い、女中に婚礼の支度を言いつけました。
「猫ちゃん、部屋を掃除して、じじい狐は窓から捨てておしまいな。脂の乗った太った鼠をときどき持ってきたけれど、じじいときたら、いつでもひとりで食べちゃって、あたしにひとつもくれなんだ」
 それから若い狐と結婚式を挙げて、めでたいめでたいと言いながら踊りました。止めていなければ、今でも踊っていますよ。

 

【ひとりごと】

 夫が妻を追い出す話と、妻が夫を追い出す話ですね。稀に世間にありそうな事件です。

 もっと酷くなると、つれあいに毎日毒をもって、弱らせていくような、、サスペンス劇場も。食べ物の恨みも怖いから、そうならないよう気をつけたいですね。

 毎日の不満も募らせないようにしましょう。