『完訳グリム童話集(一) 金田鬼一 訳』その2
『猫とねずみとお友だち』<KHM2>
【あらすじ&ひとりごと】
猫がハツカネズミと知り合いになって一緒に暮らすことになります。
猫とネズミは冬に備え、小さい壺に入ったフェット(牛脂)を買い、教会に隠すが必要なときまでは手をつけずにすることにします。
ところが、猫は我慢ができなくなり、「叔母からいとこの名付け親になってほしいと頼まれた」と嘘の理由で外出し、ネズミに内緒でフェットを舐めに教会へ行くようになります。
ネズミは、油の多い上皮の部分を舐めてケロリと帰ってきた猫に、いとこの名はどんな名前を付けたのか聞くと、「カワナメ」だと答え、奇妙な名前だとネズミは思う。
その後も猫は同じ言い訳を繰り返し教会へ出掛け、フェットを半分平らげてしまう。そして名付けた名前は「ハンペロ」。
そしてもう一度、猫はネズミに内緒で教会に行き、フェットを残さず全部舐めてしまう。今度は「ゼンペロ」と名付けたとネズミを欺きます。
冬になりフェットが必要となって、猫とネズミは教会へ行きますが、壺の中身は空っぽ。事の真相を知ったネズミは怒ります。(要約)
結末は気の毒ですが、本来の猫とネズミの関係になってしまいました。
このお話は記憶にありません。猫とネズミでは、どうしても猫が悪者になってしまいますね。物語では強い者の宿命でしょうか。
だんだん減っていくフェットの量を暗に示す「いとこの名前」が何とも愉快ですね。猫の罪悪感なのか、それとも傲慢さなのか。
世間には、自分の利益のために人を欺く人がいますからね。詐欺は巧妙な手口になっていますから気を付けなければいけません。
『マリアの子ども』<KHM3>
【あらすじ&ひとりごと】
木こりの夫婦は大変貧しく、3歳になる女の子がいましたが、子どもに何を食べさせればよいか途方に暮れていました。
ある朝、木こりは心を痛めながら森の中で仕事を始めると、聖母・マリア様が現れ、自分が天国で母親として面倒を見ると言う。
木こりは、仰せに従って娘をマリア様にお渡しすると、マリア様はその子を天国へと連れていきました。
木こりの娘は、天国で幸せな日を送り、14歳になったあるとき、マリア様からこの天国の13の扉の鍵を預かってほしいと渡されます。
このうち12の扉を開けてもよいが13番目の扉は決して開けてはいけないと言われます。
しかし、木こりの娘はマリア様と約束したものの、知りたくて我慢ができなくなり、自分ひとりならわからないだろうと、13番目の扉を開けてしまいます。
すると、中には三位一体の神様が炎と光彩に包まれ鎮座しており、その光彩に触れるとその触れた指が金色になってしまいました。娘は怖くなって逃げ出します。
マリア様に言いつけは守ったかと3度聞かれますが、娘は扉を開けていないと嘘をつきます。マリア様は嘘つきは天国にいる資格はないと、娘の声まで奪い下界へ追放しました。
その後、木こりの娘は、下界で子を3人もうけますが、そのたびごとにマリア様から13番目の扉を開けたことを聞かれますが、認めません。
マリア様は3人の子たちを取り上げてしまいました。
しかし、娘はせめて死ぬ前に嘘をついたことを悔い改めたいと思ったとたん、懺悔の言葉が大きく出ました。
すると、マリア様が娘から奪った子たちを抱え現れ、「罪を悔いて懺悔する者には罪は許されている」と話し、永遠の幸せを授けられました。(要約)
これは「罪を憎んで人を憎まず」ということでしょう。とても真似はできませんが。
そこまで行かずとも、人としての基本的なことを顧みることでしょうか。「ありがとう」や「ごめんなさい」、「自分の間違いを認める」など。
大切なことですがなかなか実行されていないかもしれませんね。