【あらすじ&ひとりごと】
はじめて読む青山美智子さんの作品、『お探し物は図書室まで』。
表紙の写真には本のほか、猫やカニ、飛行機などの羊毛フェルトが生きているようで、今にも動き出しそうです。
そして、帯には、「お探し物は、本ですか?人生ですか?」と書いてあります。
頁を開く前に物語に流れる温かさに引き込まれそうです。
本作品は、五章から連なる短編集です。
「二十一歳婦人服販売員」
「三十五歳家具メーカー経理部」
「四十歳元雑誌編集者」
「三十歳ニート」
「六十五歳定年退職」
それぞれの主人公が図書室を訪れ、自身の生き方に気付いていく物語です。
その人たちをさりげなく導いてくれるのが、図書館司書の小町さゆりさん。大きくて、頭の上にはお団子にかんざしを挿した白熊のよう。怒っているようだけど声は穏やかで、目を合わせると観音像のような慈悲が感じられる。
そんな小町さんが、迷える人へお探しの本と、さらに素敵な1冊を示してくれます。そして、付録として小町さん手作りの羊毛フェルトも合わせて。
こんな図書室があったら行きたいですね。
小町さんが、訪れた人たちに話す言葉が心に残ります。見方や考え方を少し変えるだけでも、普段の生活がいい方向へと向かうのだと思わせてくれます。
私も先が不透明なひとり。仕事を早期退職して、今はやりたいことを温めながら、社会に取り残されないよう始めたアルバイトの身。
思う道があるのなら、自分に言い訳を考える前に、まずは一歩踏み出すことが大切ですね。
そんな気持ちにさせてくれる本です。とても共感することができました。
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