ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】グリム童話『白へび』

『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その13

『白へび』〈KHM17〉

 

【あらすじ(要約)】

 昔あるところに賢い王様が住んでいました。
 王様には変わった習慣があり、毎日お昼の食後、だれもいなくなると、信頼の厚い召使いが、もう一皿持ってきます。それには蓋がされ、その召使いも何が入っているのか知りません。王様は一人にならないと食べようとはしないからです。


 ある日、召使いは中身が知りたくて皿を自分の部屋に持っていき、蓋をとってみると中には一匹の白ヘビが入っていて、少し切って、口に入れました。
 舌に触った途端、外からひそひそ話が聞こえ、召使いはヘビを食べたせいで、動物たちの言葉がわかるようになりました。


 この日、お妃様の指輪がなくなり、召使いに疑いがかけられました。
 王様は召使いを叱りつけ、犯人の名を言えなければ、おまえが犯人だと脅します。


 そのとき、小川にカモたちがいました。
 召使いは、一羽のカモがお妃様の窓の下にあった指輪を飲んでしまったと聞きます。
 召使いは、料理番にカモの首をちょん切らせ、はらわたを出すとお妃様の指輪が入っていました。


 召使いは、王様に証拠を見せ、宮中で一番名誉のある位につく約束をしましたが、それを断り一頭の馬と旅行のお金をお願いし、旅に出ます。


 ある日、とある池に三匹の魚が罠にかかっていました。
 召使いは三匹の魚をはなしてやると、魚たちは「あなたのことは決して忘れません」と言いました。


 しばらくすると、砂の中でアリの王様が、家来たちを馬が蹄で踏み潰していると言っているのが聞こえました。
 それを聞いて、召使いはわき道へよけてやります。アリの王様は「あなたのことは忘れません」と言いました。


 また道を進み、森の中へ入ると、お父さんカラスとお母さんカラスが、子のカラスたちを巣から放り出しています。
「もうこれ以上、おまえたちに食べさせることはできない」と言い、まだ飛ぶこともできない子カラスは、餓え死じにするしかないと鳴き叫びました。
 これを聞いた召使いは、自分の馬を剣で殺し、子カラスたちの餌にしました。子カラスたちは、「あなたのことは決して忘れません」と言いました。


 そして、召使いは歩くことになります。

 とある大きな町へ一人の男がやってきて、言いました。
「お姫様がお婿様を探しているが、お姫様に求婚するものは、難問を解かねばならない。もし解けなければ命はない」と。


 今までたくさんの人たちがやってみたのですが、命を失うばかりでした。ところが、召使いはお姫様の美しさに目がくらみ、王様にお姫様をいただきたいと申し出ました。


 召使いは海辺に連れられ、目の前で金の指輪が海の中に放り込まれました。王様は指輪を海の底から拾ってくるようにと言い、もしも指輪がなければ、命を落とすまで何度でも突き落とすと言います。


 召使いが考えこんでいると、三匹の魚が泳いできました。いつか助けた魚たちでした。魚は口にくわえていた貝を波打ち際に置きました。その貝には金の指輪が入っていました。
 召使いは喜び、王様へ持って行きましたが、気位の高いお姫様は、召使いが自分と同じ身分の者でないことを蔑み、二番目の問題を注文しました。

 お姫様は庭にキビの一杯入っている袋を十袋も草の中に撒き散らしました。明日の朝までに拾い集めるよう、お姫様は言いました。


 召使いはしょげ返り、夜明けに死刑場へひかれていくのを待っていました。
 ところが、朝には十袋が一つ残らず一杯になっています。それは、いつか助けたアリの王様が、夜のうちに何千という家来をひき連れてきて、キビの粒を拾い集めてくれたのでした。


 お姫様は驚きましたが、高慢な気持ちはまだおさまらず、あの男は二つの問題を解いたが、命の木の実を一つ取ってこないと夫にはなれないと言いました。
 召使いは命の木がどこにあるのか見当もつかないため、とにかく旅に出ます。


 召使いは森の中に入り、木の下で寝ようとしたとき、金の実が一つ落ちてきました。    カラスが舞い下りて言いました。「餓え死にしそうなところを助けてもらった三羽の子カラスです。命の木のある世界の果てまで飛び、取ってきました」と。
 召使いは喜び、お姫様に金の実を持っていくと、もう言い逃れができなくなりました。
 二人はその命の実を二つに分けて一緒に食べると、お姫様の心は、召使いを思う気持ちで一杯になり、二人は幸せに長生きしました。

 

【ひとりごと】

「情けは人の為ならず」が滲み出ている童話ですね。でも「矛盾」も感じます。命の尊さに変わりはないからカモと馬はとても気の毒ですね。

 やはり自然の摂理に従うことが大切でしょう。

 そして、気になるのは王様。「白へび」を食べているのだから、すでに動物たちの声が聞こえるはずだけど、何も触れられていませんね。