【あらすじ&ひとりごと】
伊岡瞬さんの作品を読むのは『奔流の海』に続いて2作品目ですが、とても読みやすい文章で、サクサク読みながらもストーリー展開が頭にスルスル入ってくる心地良さがあります。事件に迫ってくると、もう一気読み必至。
本作は、一見、仲の良い家庭を演じながらも、それぞれが自分勝手に生活している一家が崩壊していく様を描いたサスペンス小説です。
地方都市ではあるが、かつてはセレブタウンと言われた場所の高台に建つ中古の戸建てに転居した山岸家。
中学生の真佐也は、不登校となり部屋に引きこもるが、友人の純二が日中両親の不在のときに遊びに来る。
父・陽一は中堅ゼネコンに勤め、家を空けることが多く、真佐也の生活にあまり関心を示さない。一方、母・裕実子は心配するも、好き勝手に生活する家族への当てつけのように勤務先の上司と不倫をしている。
ある日、家の前の公園で蹲っている少女・あかりを真佐也は見かけ、家の中へ入れてやる。あかりは、家庭環境に問題があるという噂があったが、それ以来真佐也を訪れるようになる。
そして、あかりが行方不明となり、山岸家のサービスルームで死体で発見される。
当然、真佐也が疑われ、簡単に自分が殺したと自供します。そこからまた真相は二転三転していきます。
真佐也が、両親のやっていることや、友人のことなど、すべてに気付いていて、それを自分の中だけに仕舞い込ませておくことに大人の罪を感じます。
小説とは言え、現代の社会を見ていても親、大人とは身勝手だなと思います。
こんな親子関係って世の中にはたくさんあると思うけど、引きこもりの真佐也が最後に「ーー話したいことがある。大事なことなんだ」と母親に言うところに彼のやさしさとこれから生きていく小さな希望を感じました。