『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その20
『はつかねずみと小鳥と腸づめの話』〈KHM23〉
【あらすじ(要約)】
昔、はつかねずみ、小鳥、腸づめが友達になって所帯をもち、仲良く豊かに暮らしていました。
小鳥の仕事は、毎日森で薪を取ってくること。はつかねずみは水を汲み火をおこしてお膳立て、腸づめは料理をする役でした。
幸せ過ぎる者は、何か違ったことをしてみたいと思うものです。
ある日、小鳥は別の鳥に会い、「 おまえが骨折って働いてる間に、あとの二人は楽をしているぞ 」と言われます。
確かに、はつかねずみは火をおこし、水を汲んでしまえば自分の部屋に引っ込んで、お膳立てまで休んでいられるし、腸づめは鍋のそばにいて料理をするだけでいい。ご飯どきになると、腸づめは野菜シチューの中に自分をすべりこませ、脂肪を加え、塩味を付け出来上がり。
そこへ小鳥が重たい木を運んでくると、皆で食事をし、それから朝までぐっすり寝るという生活でした。
次の日、小鳥は知恵をつけられたので、ここらで役割を変えようと提案し、森へ行くことを承知しませんでした。
はつかねずみと腸づめは頼みましたが、小鳥にはかなわず、くじ引きをして薪を取りに行くのは腸づめ、はつかねずみが料理番、小鳥が水を汲む役になりました。
ところが大変なことになります。
腸づめは森へ出掛け、小鳥は火をおこし、はつかねずみが火に鍋をかけ、腸づめが薪を持って戻ってくるのを待っていました。
けれども、いつまでたっても腸づめが戻ってこないので、心配して小鳥が迎えに出てみました。すると、路ばたに犬が一匹いるのを見つけました。犬は獲物が来たと思い、腸づめを殺してしまったのです。
小鳥は犬に文句を付けましたが、何を言ってもダメでした。
小鳥はしょげ返り、薪を背負って飛び帰るとネズミに事情を説明しました。二人はとても悲しみ、これから二人でがんばって離れずに暮らしていくことにしました。
小鳥はお膳立てをして、はつかねずみは食事の支度をしました。
はつかねずみは腸づめがやっていたように、自分も鍋の中に入り、野菜シチューに脂肪を入れようとしました。
ところが、真ん中まで行かないうちに火傷して死んでしまいました。
小鳥が料理を並べようとしますが、料理番がいません。小鳥ははつかねずみを探しましたが、二度と見つかりませんでした。
うっかりしているうちに火が薪の中へ飛んで火事になりました。小鳥は慌てて水を汲みに行きますが、釣瓶が井戸の中へ落ちて、釣瓶と一緒に自分も井戸へ落ち、溺れ死んでしまいました。
【ひとりごと】
またまた今回もみんな死んでしまう物語でした。
ここでは、適材適所ということを訴えているのでしょうか。
社会でも適材適所は大切なことですが、誰もがどんな業務もできるようにと、担当業務のローテーションを定期的に行っているところもあるようですよね。
また、部署によって違いがあったり、性別でというところもまだまだあるのでしょうか。
とかく、人は他人を羨んだり、自分が一番大変だと思いがち。
人の畑はよく見えるものです。まずは自分自身を見つめて自分のできることを精一杯やることですね。小鳥さんの気持ちもわからなくもないですが。
でも、腸づめ(ソーセージ)が何度何度も鍋の中に入り込んで、出汁を出し続けると干からびてこないのかな。そんなつまらないことが気になってしまいました。
今回も皆死んでしまいましたが、やはり誰かが死ぬより、幸せになるストーリーがいいですね。