ふでモグラの気ままな日常

読書をこよなく好む早期退職した元公務員が、読んだ本の紹介を中心に、日頃気づいたことや感じたことなどについて、気ままにひとりごとを発信する雑記ブログ

【読書】『まち』小野寺史宜 著

【あらすじ&ひとりごと】

 ストーリーの続編ではないですけど、『ひと』『まち』『いえ』の3シリーズとなっている『まち』を読みました。

 『ひと』も自分の心の中にするっと入ってくるような、淡々としていてやさしい雰囲気が伝わる作品でしたが、今作も同様の気持ちになりました。

 

 尾瀬ヶ原の広がる群馬県片品村で歩荷(ぼっか)をする祖父に育てられた江藤瞬一。

 歩荷とは、食料や燃料などを麓から山小屋へと運ぶ仕事のこと。数十キロもの荷物を背負い、十数キロの山道を登り、ときには二往復することもあるという。この「歩荷」という言葉を私は知りませんでした。

 瞬一は、高校卒業後、祖父の勧めで上京し一人暮らしを始める。祖父から、「人に頼られるような人間、人を守れる人間になれ」との教えを胸に都会へ出ていき、人と交わりながら、強くやさしく成長していく若者の物語です。

 

 小野寺さんの作品は、『ひと』、『まち』、『ライフ』、『縁』などもそうですが、荒川の流れる江戸川区の平井のまちを舞台としていて、アパートや商店、登場人物も「あのときの」って感じで登場するのがまた楽しみに一つにもなってきました。

 

 今作品でも、人が人と交流して、学び、自身を成長させていくことの大切さがさらりと綴られています。

 アパートのお隣さんの困りごとを助けてあげたり、他愛のない話をしたりと、田舎では普通ですが、なかなか都会ではこんな若者はいないでしょうね。

 私も学生のときは東京に住んでいましたが、アパートのお隣の方と一度も顔を合わせることもなく、どんな方なのかも知りませんし表札すらありませんでした。もう30年以上前でこうですから、現代ではなおさらのはず。

 そんな現代だからこそ、頼るより頼られる人になって、困った人を助けられる人たちが新鮮に思えるのかもしれません。そんな生き方ができればいいですね。

 

 次は3シリーズの最後、『いえ』を読もうと思います。

祥伝社(2019)