【あらすじ&ひとりごと】
冒頭から、大型ショッピングモールでの大量無差別殺人が始まり、一人の人間の死の真相をめぐって、生き残った人たちが互いに嘘をつき、真実を隠す。そして結末を迎えるまで息をつかせない内容に、強烈な一撃を見舞われたような感覚でした。
読後のこの気持ちの高揚は何だろう。そんなインパクトの強い作品でした。
大型ショッピングモール「スワン」で死者21名を出した無差別銃殺事件。
犯人は自害し事件の関係者5人が生き残るが、そのうちの一人である高校生の片岡いずみは、事件現場で犯人と接しながらも生き延びた。
そして、いずみは、被害者のはずが犯人と接していたことで非難される側へと一転していく。
そんな中、招待状が届き、事件に巻き込まれ生き残った5人の関係者が集められる。ある女性の死の真相を明らかにするために。そしてまた事件が事件を呼ぶ。
「お茶会」と称したこの会合での5人のやりとりが息を飲みます。
現場で起こった本当のことは何なのか。互いに嘘をつき、真実を明らかにしないところに人の醜さや、やさしさが浮き彫りになって、はじめは事件の悪は「犯人」、次に対応が遅れた「警察」、不適切な現場誘導の「警備員」、そして被害者から一転して非難を受ける「いずみ」が「悪」へと立たされる。
責めるべき犯人がいなくなると、やり場のない怒りや悲しみの矛先は別へと向けられる。そんな人間の罪というものを考えさせられます。
最後の最後まで展開があって、読みごたえがある一冊でした。
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