【あらすじ&ひとりごと】
砥上裕將さんの作品といえばデビュー作の『線は、僕を描く』。横浜流星さんの主演で映画化もされましたね。
水墨画の「線」を描くことで、悲しみを秘めて生きる主人公の「僕」が、失ったものを埋めながら救われていく。繊細な描写がとても印象的でした。
今回は『7.5グラムの奇跡』を読みました。視能訓練士の若者の物語です。
視能訓練士の資格を取ったが、なかなか就職先が決まらない大学卒業間近の野宮恭一。後がない中、面接を受けたのは北見眼科医院というまちの医院。
おおらかな院長は、恭一のしっかりとした思いを感じ取り、即採用することにする。恭一は、失敗を繰り返しながらも先輩たちに見守られ、そして患者と向き合い、ともに自らも視能訓練士として成長していきます。
5話からなる連作短編集で、繊細な器官である「目」をめぐり、どの短編もとても心温まるきれいな物語でした。
タイトルにある「7.5グラム」とは、目の重さ。そんな小さな器官から生まれる奇跡。見えることが当たり前になって、その「見える」という奇跡が、生まれたときから与えられていることでその大切さを忘れてしまう。
私も目がかなり悪いから、当たり前に見えるというその精緻な器官の奇跡を大切にしていかなければと思います。
そして、目だけではなく、からだのすべて、生きていることを大切にしていくべきですね。