『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その25
『死神とがちょうの番人』
【あらすじ(要約)】
不幸ながちょう飼いが、白いがちょうの番をしながら大きな川の岸を歩いていました。
そのとき、死神が川を渡ってきたので、どこから来たのか、どちらにおいでなのか、がちょう飼いが聞きました。
死神は、この世の中から立ち去るものだと答えます。
がちょう飼いは、どうしたらこの世の中から立ち去ることができるのかと死神に聞くと、この川を越えて向こう岸にある新しい世の中へ行くだけだと答えました。
がちょう飼いは、この世の生活が嫌になったので、自分を川向こうへ連れて行ってほしいと頼みました。
死神は、まだそのときが来ない、今は他にしなければならない仕事があると言いました。
そこから遠くないところにケチんぼうの欲張りがいました。
この男は毎晩寝床に入ってからも、お宝をもっとたくさん集めることばかりを考えていました。
死神はこの男を大きな川に連れて行き、突き落としました。男は泳げなかったので、向こう岸へ着かないうちに沈んでしまいました。飼っていた犬猫が駆けてきましたが、一緒に溺れ死んでしまいました。
それからいく日かたつと、死神はがちょう飼いのところにやってきて、「一緒に来るかね」と声を掛けました。
がちょう飼いは、白いがちょうを連れて向こう岸へ渡ると、がちょうは白い羊に変わっていました。
がちょう飼いはこの美しい土地をつくづくと眺め、羊飼いたちはここでは王様になるのだと聞かされました。
気を付けて辺りを見回していると、向こうから羊飼いの大親方のアブラハムとイザーク、ヤコブがやってきて、がちょう飼いの頭に王様の冠をのせて、がちょう飼いを羊飼いの御殿へ連れて行きました。そこへ行けば今でもこの人に会えます。
【ひとりごと】
この物語はメルヘン番号が付されていません。童話集からは省かれているのでしょう。
とても短い物語で細かくは読み取れませんが、新しい世界での生活、あの世の世界でしょうか。
でも「大きな川」は三途の川のような存在とは違うようですね。ケチんぼう男が溺れ死んでいますからね。
登場するアブラハム、イザール、ヤコブは神と思うので、神の世界へ導かれたということでしょう。
やはり生前は、よい行いをして徳を積まなければいけませんね。